Little Wing '94
大学に入学した年の夏、僕は初めて「鳥人間コンテスト」に実際に参加しました。そして、自分もその製作を手伝った機体が琵琶湖の湖面に墜落してしまう様を眺めていた僕は、次年度のパイロットになることを決意しました。しかし、自分の体力は恐ろしいほど微々たるものでした。僕の他にパイロットになることを希望した人は二人いたのですが(なんと二人とも女の子)、僕はその二人よりも体力が劣っていたのです。
その時から、僕はパイロットになるために一人奮闘しました。その夏のうちに、パイロットへの執着心を胸に貯金をはたいて1台のロードレーサーを購入しました。しかし何はともあれ、基礎体力作りから始めなければなりません。何しろかつて運動なぞ学校での体育の時間枠の中でのみの経験で、およそ体育会系な生活とは無縁な人生を送ってきたわけですから。
全くの0から始めたわけで、当然のことながら僕の体力は目に見えて向上し始めました。さらに、紹介してもらった文献などを頼りに心拍数をモニターするトレーニング法なども積極的に取り入れていきました。やがて二人の女性パイロット候補を抜き、さらには過去のWASAのパイロットの記録にまで迫るようになりました。チームの中でも、パイロットとしてなんとか認知されるようにまでなることができました。そうこうしているうち、試験飛行が開始されました。僕はそれまで、もちろん人力飛行機も含めておよそ「飛行機」などというものに乗ったことはなく、従ってLittle Wing '94が生まれて初めて乗る飛行機でした。
当時はサークルとして試験飛行の方法もまだよく確立されておらず、第一回の試験飛行にして主翼を大破してしまいました。それでも、日大航空研究会の方々にいろいろと教えていただくうちに、なんとか自走離陸することができるまでになりました。しかし定常飛行に至るにはほど遠く、ほとんど機体を煮つめ切れないまま臨んだ1995年度の鳥コンでは離陸直後に操縦系の故障という、パイロットとしてはいかんともしがたいアクシデントに見舞われ、凡記録に終わりました。それでも、Little Wing '94は僕にとって生まれて初めての飛行機であることに変わりはなく、とても思い出深い機体です。