第16回宇宙ユニットシンポジウム 2日目
著
2月12日の覚え書き、第16回宇宙ユニットシンポジウム 1日目の続き。
尾崎直哉氏の講演「宇宙工学分野における若手研究者の日常と夢」
深宇宙コンステレーションというアイデアが初耳で、すごく面白いなと思いました。言われてみれば確かに、コンステレーションを地球周回低軌道に限定する必要はないですものね。これが実現すれば、小惑星の地球衝突リスクを下げることもできるわけか......個々の衛星が自律的に連携できればいろいろ夢が広がりそう。
佐藤達彦氏の講演「宇宙飛行士を宇宙線被ばくから適切に護る——有人火星探査の被ばくリスクはどのくらい?」
会場巻き込み型のセッションで、途中途中にクイズを挟んでくる感じで楽しい講演。ちなみにクイズは外しまくりました。『The Martian』で描かれた火星への往復&滞在は、放射線被曝の観点では(仮定の置き方にもよるけど)それほどリスキーでもないのね。そして、太陽型惑星を10万年ものあいだ観測はできないが、10万個の太陽型惑星を1年間なら観測できる......という発想に感心。
髙橋昭久氏の講演「宇宙での放射線と重力変化の複合影響」
放射線と重力の複合影響というテーマがまず、大変興味深い。自分のみならず世の中的に、今まで両者を暗に切り離して捉えすぎていたかもしれないのだけど、相関関係があるならこれはすごく面白いこと。自転車乗り(競輪選手とか?)は自転車にばっかり乗ってるから意外に骨がスカスカって話も新鮮でした。やはり地球環境ならではの刺激がないと、免疫が損なわれる......?
鈴木一人氏の講演「宇宙開発の国際政治」
Twitterでは割とよくご発言を目にしてきた鈴木氏の講演。宇宙の民主化、商業化、軍事化、そして脆弱性の顕在化(衛星利用能力の排除=衛星攻撃能力をめぐる動き)というトレンドを宇宙開発2.0として総括。宇宙空間は国ベースのガバナンスを効かせざるを得ないものの地上とは異なる理屈、物理特性ゆえ難しいという指摘はごもっとも。
パネルディスカッション:宇宙開発と人材育成
プロジェクトに失敗を許容するマージンを織り込むというのは、確かに大事だけれど、プロジェクトそのものより周囲の環境だったり社会そのものにその種のマージンが欲しいよなと思ったり。また、学生のうちにプロジェクト経験を積むのは良いことに聞こえるけれど、積ませる側のリスクテイクには怖い面があるというのは、なるほどです。短期的成果を求められ過ぎる?問題については、私は経済合理性の罠だと思うけど、どうなんでしょうね......そしてやっぱり情熱は大事という感想(宇宙法を学部で学び修士への進学を検討したが諦めリクルートに就職した方の質問より)。良い刺激をいただきました!