NEVER STOP イノベーティブに勝ち抜く経営
著
無償で『NEVER STOP イノベーティブに勝ち抜く経営』をいただいたのはもうだいぶ昔に遡りますが、ようやく読了。本書は「はじめに」にある通り、崩壊寸前だった富士フイルムの脅威的な再生を描いたすばらしいストーリー
。2年前、大学院で同社のお偉い方の講演を拝聴したのがきっかけでしたが......改めて、実に素晴らしい第二の創業だったのだなーと実感。
富士フイルムのマネジメントサイクルは、「See-Think-Plan-Do」を基本としている。
略してSTPDサイクル、らしいのですけど、広く一般的にはPDCA、もう少しニッチなところではOODAが流行っているところを、あえてそのいずれでもなく中間的な?サイクルを採用していたのが興味深かったです。計画の前工程や暗黙知を重視したモデル、と言えるかしら。
経営トップは真剣の勝負であり、ナンバーツー以下は、竹刀の勝負
上記はコトラー氏ではなく古森氏の執筆した章から引用した言葉ですが、地味にショッキングな表現。それだけ背負うことのできる責任の質や量が異なるというのは頭では理解していても、真剣と竹刀の違いと言われてしまえば、まあ......つらく感じるところもあります。もう少しうまく責任なり負担を分散できないものかな?とか。
君の行動によって、周囲の人間が夢をふくらませ、未知の物事を学ぼうとし、行動を起こしてより優れた人間になろうと決意したとするなら、君はリーダーだ。
上記は、ジョン・クィンジー・アダムズ氏の言葉で第7章、古森ウエイの冒頭に引用されているものですが、耳が痛すぎてもげそう。というか、世にリーダーと呼ばれているうちの何割が、果たして上記にあるほどのポジティブな巻き込み力を発揮できているのだろう。いや他人のことはいい、自分を何とかしないとですね......同様に、第9章の冒頭にある
準備を怠ることは、失敗を計画しているようなもの
というベンジャミン・フランクリン氏の言葉も、なかなか耳が痛いというか、刺さるものでした。そうか、あの時のあれは、わざわざ失敗を計画し実行していたんだな......などと身につまされまくります。
現在の事業活動を基点に考える従来の「インサイドアウト」の視点から、「社会課題」を基点に、事業のあるべき姿、製品、サービスを考えていくという「アウトサイドイン」の発想へ
本書で発見したことのひとつには、インサイドアウトとアウトサイドイン、2つのアプローチでバランスを取り続けることの大切さ。確かにあらゆる組織の軸足は確実にアウトサイドインに移りつつあるのだろうけど、発想したことをいざ実践する段においてはインサイドアウトの視点も当然必要なのであって。同様に
富士フイルムはおぼろげに見えるデジタル化の混乱を認識できた。そして目指すべき未来を起点にしてバックキャストすることで、第二の創業を成功させた。
というくだりからは、バックキャストとフォアキャストのバランスの大切さ、に思い至りました。ことSDGsやらCSRの文脈では、やたらバックキャスティングの重要性が語られがちだけど、同時並行でフォアキャスティングしていかないと絵に描いた餅で終わる的な? 矛盾して聞こえるかもしれませんが。