アクセシビリティオーバーレイは銀の弾丸ではない
著
昨年、後付けのアクセシビリティソリューションベンダーに向け一言を書いた時点では、accessiBeの社名が日本語圏で取り沙汰されることは(自分の観測範囲では)無かったのだけど、簡単にアクセシビリティの問題を解決する「アクセシビリティオーバレイ」のaccessiBeが約29.6億円調達という記事によって一躍、同社の知名度が上がりアクセシビリティオーバーレイの名前も広まったように感じます。
Webサイトにほとんど手を加えることなく既存のコンテンツをアクセシブルにできるという耳障りの良い謳い文句により、あたかもアクセシビリティオーバーレイが銀の弾丸のように映るかもしれません。しかし多くの識者が指摘済みの通り、この手法にはさまざまな問題があって、銀の弾丸からは程遠い存在です(少なくとも現時点においては)。どんな問題があるかはShould I Use An Accessibility Overlay?に端的にまとまっているので一部を超訳すると、
- アクセシビリティを補完する機能が(宣伝文句とは裏腹に)不十分
- OSやブラウザがネイティブで提供する機能や支援技術と重複/干渉
- プライバシーを確保できない恐れ
- 表示パフォーマンスの低下
......といった感じで、これを導入することでむしろ、アクセシビリティを低下させブランド価値を毀損するリスクが高いと考えます。唯一、アクセシビリティに取り組んでいることが「一見して」わかるようアピールする目的において、多少は役立つかもしれませんが......。ことaccessiBeについては、アクセシビリティオーバーレイを導入するだけでADAやWCAGに準拠させることが可能と謳っているけれど、それが悪質なマーケティングと批判されているように感じます(Twitterでハッシュタグ#accessibeを眺める限り)。WordPress.org Removes Fake Reviews for AccessiBe Pluginの一件も、同社への信用・信頼を損ねているのではないかしら。同社に対する個人的な考えは、少し前にRe: Industry wake up call: the future of web accessibilityで書いた通りです。
そういうわけで、自分もOverlay Fact Sheetに署名させていただきました。
[ 2021-07-15 追記 ] なんか、せっかく署名したけど英語表記では埋もれちゃってわかりにくいので、漢字表記を併記するようにしました。