品質とか幸福とかガイドラインの活用法とか
著
CSS Nite LP62「Webアクセシビリティの学校」特別授業の続きのお話。アンケートで寄せられた中に、「品質の先に何があるんですか!」っていうご質問がありました。アクセシビリティは品質、と力強く言い切ったことへの反応と思うのですけど、感嘆符に込められたのは、果たしてどんな想い?勢い?なのか......想像するしかないのですが、フォローアップ(イベント当日から起算して90日を目安に一般にも公開の予定)で自分が書かせていただいたのは、以下のようなお返事です:
哲学的な問いをありがとうございます。深いですね......脊髄反射的には「幸福」という言葉が思い浮かんだのですけど、自分もその答えが知りたくて、さまざまな品質向上の旗振り役を担ってきた気がします。あくまで一意見として、ご納得いただければ幸いです。
なんで「幸福」なんて言葉が真っ先に思い浮かんだのだろうと思っていたら、そういえば少し前に黒須先生がお書きになった記事、幸福のデザインを忘れていませんか - U-Siteを読んだ影響かもしれないなーと、今さらながら思った次第です。同記事の冒頭には、以下のようにあります:
利潤の増大はあくまでもUCDやHCDの結果のひとつであり、主要な結果は人々の満足感や幸福であるはずだ。そのことを忘れてしまったように見える昨今の状況においては、本来、我々が目指すべき目標が何だったのかを改めて知らせることが必要だろう。
「利潤の増大」を「ガイドラインへの準拠」、「UCDやHCD」を「アクセシビリティ品質の向上」にそれぞれ読み替えると、自分がクロージング・トーク「インクルーシブネスを超えて」で語ったメッセージと被るように感じられるのです。繰り返し不定期に言われることですけど、WCAGやJIS X 8341-3といったガイドラインへの準拠は、手段であっても目的ではありません。
ガイドライン自体は、品質の高低を判断する一種の物差しとして有効ですし、必要とは思いますけど、それにとらわれすぎるのも考えものだと、常々思うのです。WCAG 2.2策定のための動きが具体化し、追加を検討する達成基準についても情報が出始めたなか、その活用方法というか、アクセシビリティ品質をどこまで高めるかという目標の立て方については今一度、再考すべき時期かもなと。
分かりやすさゆえ、どうしても「A準拠(=適合レベルAの達成基準を満たす)」みたいな目標になりがちだし、公的機関については実際、みんなの公共サイト運用ガイドラインにおいて「AA準拠(=適合レベルAおよびAAすべての達成基準を満たす)」が求められていて、それはそれで素晴らしいけれど、目標にはもう少しバリエーションがあって良いように思うし、そのほうが現実的のような気も。ユーザー側の幸福のみならず、アクセシビリティ品質を向上させる側の幸福も考えて目標を立てられたらなーとか。
......とりとめなくなってきたのでこの辺で。