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大妻学院創立110周年記念講演 金井宣茂宇宙飛行士講演会「未来に開く きぼう の扉」

なんか中学生以上対象だし、会場は女子大だし、おっさんが申し込んでも大丈夫かなと思っていたけど、あっさり入場票が届いたので、大妻学院創立110周年記念講演 金井宣茂宇宙飛行士講演会「未来に開く きぼう の扉」に参加しました。動く金井さんを生で見るのは、昨年バイコヌールへ打上げを見に行って以来。息子も誘ったけれど、世間一般では三連休の中日であっても普通に土曜の授業があるというので、自分一人で参加。

講演自体は、ミッションハイライトのビデオを流しながら割とあっさりと、30分ほどで終わってしまったような? ただ、その後に続いた学生インタビューとか、会場との質疑は面白かったので、参加して良かったです。以下は、多少不正確なところもあるかもしれないけど、まずは学生さんとのやり取りのまとめ:

宇宙実験は私たちに何をもたらすのか?
新薬の開発にかかる時間短縮や低コスト化が見込める。地上における実験の延長。
民間宇宙旅行は楽しみ?不安は?
行ってみて、宇宙はそれほど特別な場所ではないと感じた。(実験などせず)ただ行って宇宙で生活するぶんには、特別な訓練も必要ないだろう。いずれ海外旅行感覚で行けるようになったらいい。
漫画『宇宙兄弟』のような展開について
漫画には漫画ゆえのドラマチックな展開がある。(同じようなことは幸い起こらなかったが)安全性に完全は無く、だからこそ訓練をしている。
医師だったから役に立ったという経験はある?
いろんな出自を持つ宇宙飛行士がいる。昔取った杵柄で、宇宙実験は好きだったし、採血などは得意。皆それぞれ得意不得意があり、得意なところで貢献できるのが面白い。
船酔いと宇宙酔いは同じ?
似ているし、同じ薬が効くが、医学的には異なる。無重力空間への適応過程で一時的に起こるのが宇宙酔いであり、体液シフトも一因。
宇宙酔いしないための訓練はある?
回転する椅子に座りながら、気持ち悪さを自分でコントロールする、回転椅子訓練という面白い訓練がある。他にも体液シフトを模擬する、ベッドを傾けて寝る訓練もあった。自分ははあまり宇宙酔いしなかった。酔い止め薬があるし、人による。
潜水艦と宇宙船、共通点は?
閉ざされた環境だし、同じ人と付き合うストレスがある点で、非常に似ている。ISSではプライバシーは保てる(あれだけ広いのに6人しか住んでいない)。
潜水艦に乗るなど地上での経験は宇宙で活かされた?
手術中の予想外の出血、予想外の癌の発見など、想定外への対処を訓練していた点では、宇宙も似ていた。実際の危険は経験しなかったが、常に自信を持ってミッションこなせた。
辛かったことは?
緊張はした。たとえばロボットアームを使った宇宙船の把持作業、掴みそこなかったら大事故だし、緊張感の中での作業は大変だった。
楽しかった思い出は?
ミッションは過酷だったので、メリハリをつけるようにしていた。張り詰め過ぎると、事故につながりかねない。毎週金曜には6人で夕食会を開き、ロシア側とアメリカ側と交互にお互いの名物を披露しあった。また土曜はムービーナイトがあり、映画を皆で見ていた。
宇宙での体験を一言で言うと?
「好奇心」。特殊な環境であるがゆえに、地上の考え方では思いつかないようなことが起こる。そこからイノベーション、新たな面白い知識への期待が湧くのが、宇宙ならではの面白さ。
写真の撮り方は、地上にいた時と変わったか?
あまり写真は得意ではなく、半年間で急に変わったということはない。難しいのは、地球の美しさは変化にある点。なかなかカメラ、写真では捉えられない。実際に宇宙から地球を見る=宇宙旅行をオススメする。
宇宙と地上、どちらが美しい?
比較はできない気がする。宇宙からでも季節を感じ取れたし(打ち上げ直後に見た流氷が帰る頃の6月には消えて無くなっている)、今住んでいるつくばの紅葉も良い。
星の見え方は違う?
ISSは地上から400kmの高さを飛んでおり、地上からと見え方はほとんど変わらないが、空気を通さないので瞬かず、ずっと光り輝いてる。また、90分で地球を一周するので、見ているうちにどんどん変わる(半球をまたぐことで見える星が変わる)。
食事には何を食べていた?
いろんな宇宙食があり、味も良い。日本は宇宙日本食に力を入れており、ラーメンもある。半年間の滞在中、食べ飽きることは無かった。
宇宙食の条件とは?
保存が効くこと、安全であること。
アミロイド実験について
宇宙では対流がないのでゆっくり綺麗に結晶を作ることができる。アミロイド実験は、宇宙でアミロイドを作ることで、そもそもそれが何かを調べると言う、基礎的な実験。
(アミロイド実験について)研究が進めばアルツハイマーは治せるか? 新薬は作れるか?
現時点ではそういう見通しはない。基礎実験であり、なかなか具体的なゴールが見えているわけではない。
人生を振り返って若者、学生へのメッセージを
子供の頃から宇宙飛行士になりたかったわけでは無く、途中で興味が変わった。その時その時で興味のあること面白いこと一生懸命やると、次第に先が広がり、もっと面白いことが見えてくる。

続いて、会場とのやり取り(質問は挙手制、司会が選んだ質問者の近くまで金井さんが行って答える形式):

(ドラえもんの漫画に端を発して)洗顔しようとして球状の水で窒息することはある?
水を顔につけるとスライムみたいに張り付いて危ない。普段は洗剤を含んだ特殊なタオルに水やお湯を含ませて拭くだけ。またシャワーはない。
命や生きることについて考え方は変化した?
宇宙で可能な医療行為は限られており、体調やストレスの管理には常に気をつけないといけない。ただ、それは地上にいても同じこと。
家族とやり取りできた?
家族や友達とのコミュニケーションは大事。毎週一回テレビ電話で話せるし、いつでも電話をかけれる(逆にかけてもらうことはできない)。メールも送れるので、割とさみしくない。
宇宙酔いで辛くなる宇宙飛行士は何パーセントいる?(※小学一年生から)
50%もいないだろう。初めて行く時に酔っても、2回目以降は酔わないと言う話を聞く。むしろ帰ってくる方がきつく、目が回ってしょうがない。自分は三日くらいは歩けなかった。
リーダーシップとは?
どうやってチームが成果を出すことに貢献できるか、だと思う。各人の得意、不得意を知ったうえで貢献を考えることがリーダーシップであり、チームワークとも呼べるかもしれない。NASAで訓練を始めた当初は自分も悩んだことがあったが、そのうち「自分は自分でいい」と思えた(肩の力が抜ける時期があった)。
忍耐力やストレス耐性はどう身につけた?
看護婦と喧嘩するなど、自分は短気なほうだった。しかし医者の仕事をしていると、引くに引けない時がある。例えば始めた手術は必ず成功させないといけない、投げ出したくなってもそれができない状況。そういう職業としての経験を積む中で身についた部分はあり、諦めにも近いかもしれない。精一杯いろんな経験を積むことが大事であり、宇宙飛行士に若い人が選ばれないのは、一定の経験値が必要だからではないか。
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