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今年のアクセシビリティの祭典を終えて

今年のアクセシビリティの祭典を終え、何はともあれホッとしています。昨年の反省を踏まえ、今年は2つのセッションに登壇させていただき、かつ「それなりに」(というのも変な話ですけど)言いたいことを言う時間をいただけたので......参加してくださった皆様、お招きくださったアイ・コラボレーション神戸の板垣さん&北山さん、中心になって会場の切り盛りをされたインフォアクシアの植木さんご夫妻、ほか関係された全ての皆様に、厚く御礼申し上げます。ありがとうございました。当日の模様については、以下のリソースを見ていただくとして、登壇セッションについて覚え書き。

トークバトル60分一本勝負「アクセシビリティ vs IA/UX」

祭典だけにNASA音頭用ハッピを着込み、登壇したセッション。内容については一切の事前の相談抜き、予定調和ナシ(ただしオチだけはあらかじめ仕込みあり)で臨んだのですけど、後から聞いたところでは、思ったよりバトルっぽい展開になっていたようで、良かったです。話してる当の僕自身はというと、正直そこまでバトルっぽくなかったというか、そもそも議論が微妙に噛み合わなかったところを修正しきれかったのが残念かつ反省点。

振り返ってみれば、おそらくその噛み合わなさは、IAとは何か、UXとは何か、そういった単語の意味するところの基本的な理解なり認識を(坂本さんと僕の間だけではなく、レフェリーの伊原さん、そして会場の皆さんとも)しっかり合わせるプロセスをすっ飛ばして話し続けたせいではなかったか、という気がしています。IAにしろUXにしろ、アクセシビリティより遥かにビッグワードだと思っているので、そりゃ噛み合わないよなぁっていうか。

早くも、来年も僕が誰かとトークバトルをするという、大変ありがたい!? オファーを頂いているのですけど、どうなりますやら......ただ個人的には、筋書きのないフリートークの方が、あらかじめ決められたアウトラインに従ってプレゼンをするより面白かった(性に合っている?)と思いますし、ひょっとして聞いている側もその方が楽しかったりするのかなぁ、と思ったり。とはいえ、植木さんの恒例のアクセシビリティをネタにした動画コンテンツや、D2DRAFTアクセシビリティ勉強会の皆さんの寸劇、澤田さんのライブといったキラーコンテンツの魅力には、たぶん敵いませんけど。

グランドフィナーレ「アクセシビリティQ&A」

期せずして、ヤスヒサさんからの質問に僕が答えることに。正確には覚えていないのですが、運用に関わらない受諾の立場として、どこまでWebアクセシビリティの改善を訴求できるか? というような内容だったと思います。僕からの答えとしては、運用に携われない(=新規構築なりリニューアルだけを請け負う)前提ではどうしても限度はあるけれども、それでもできることはあるだろう、と言うもの。

具体的には、経営理念なりそのWebサイトが関わる中で最も上位の概念と紐づけて、Webアクセシビリティに取り組む理由なり動機を作文し、ガイドラインの類に明記すること。サイトを構成する(運用を通じて繰り返し利用される)個々のモジュール(=UIパーツ)について、一定のアクセシビリティを担保するよう作成しておくのは、言わずもがな必要ですが。

無論、それでもアクセシビリティ品質が、運用の中で次第に低下していく可能性はあります。そこはやはり、Webサイトに関わる全員のあいだでカルチャーとプロセスの形成が欠かせません(Webアクセシビリティ、まず取り組むべきはカルチャーとプロセス参照)。しかし運用に携われないということは、その形成に貢献できないことを意味しますから、まぁ限度・限界があるなと。

あと、既に時間が押していたし、言いたいことの一部は他の登壇者の方がコメントされていたから、自分は回答に加わらなかったものの、正しい読み上げに関しどこまでコンテンツに手を入れるべきか? みたいな質問がありました。スクリーン・リーダーなどの読み上げに関して声を大にして言いたいのは、そもそもコンテンツの側だけで正しさを実現するのは無理がある、ということ。

少し前に電子書籍についても似たようなことを書きましたが(『電子書籍アクセシビリティの研究』公刊記念シンポジウム参照)、正しい読み上げや、それがもたらす理解を実現するための負担なりコストは、コンテンツの側と支援技術なりコンテンツを処理するソフトウェアの側、そしてユーザー(のリテラシー)の側と、いずれかに偏りすぎることなく按分されるべき(コンテンツの側はその前提に立って、過重な負担とならない範囲で対応すべき)、というのが自分の考えです。いずれソフトウェアが進化し、文脈を適正に解釈のうえ正しく読み上げるようなことができるようになれば良いのですけど。

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