レスポンシブ・ウェブデザイン標準ガイド
著
こもりまさあき著『レスポンシブ・ウェブデザイン標準ガイド あらゆるデバイスに対応するウェブデザインの手法』は、発売日の翌日に最寄りのTSUTAYAで購入(リアルタイムではないにせよ在庫の有無がiPhoneアプリで確認できるのは便利)、そのまま隣接しているスタバで読み終えました。日本語で書かれたおそらく日本初のレスポンシブWebデザイン(RWD)の専門書ということで、発売前からかなり楽しみにしていたのですけど、期待し過ぎてしまっていたせいか、読み終えたときにはだいぶ物足りなく感じました。主に気になったところとしては:
- RWDを最適化のためのデザイン手法として紹介されていた点にはあまり賛同できません。理由については、レスポンシブWebデザインと「最適化」で書いた通り。
- p.38に登場する「ブラウザ・ファースト」という言葉、定義が補足情報として付記されてはいたのですが、ちょっと意味がわかりませんでした。「モバイル・ファースト」というのが実際上は「コンテンツ・ファースト」であり「コンテキスト・ファースト」でもある、という理解はしていたのですけど、「ブラウザ・ファースト」とはこれいかに。
- LukeW | Multi-Device Layout Patternsで語られた分類が日本語で読めるという意味では、p.39から始まる「レスポンシブなレイアウトの設計パターン」はとても参考になりますし、有り難いなと思います。実例もあわせて紹介されているのが素敵です。
- p.45でブレイクポイントをメジャーとマイナーに二分して捉えているのは大いに賛成。要件定義段階ではメジャーなブレイクポイントを検討・定義し、ビジュアルデザインとマークアップ/スタイルシート設計をアジャイルぽく回す段階では、モジュール個別にマイナー・ブレイクポイントを決めて行く的な。
- p.47で紹介されているRESS、の導入例として僕はセミナーでUniversity of Notre Dameを取り上げています(参考:A Case for RESS | weedygarden.net)。
- p.59でhttp-equiv="X-UA-Compatible"なmeta要素をオススメされていますが、自分は不要派。
- p.59で
スマートフォンのブラウザでデバイスの向きを変更した時におこる、文字の拡大縮小問題
に言及されているのですけど、これって実際のところどれだけ広範に発生している事象なのでしょうか。Apple製品だけではなくて? - p.60でhtml5shivにつき
Google Codeでホストされているためそのまま指定通りに組み込めばよい
とされていた点は、IE対応でよく利用するhtml5shivの使用方法変更について|Blog|Skyward Designにある通りの状況。こもりさんも既にお気づきなので、改訂版では修正されることでしょう。 - p.65で
「respond.js」の読み込みは、Media Queriesに対応していないIE6〜8のバージョンでもMedia Queriesを有効にするための対応です。
とありますが、自分は不要派。IE6〜8は基本的にデスクトップ環境でしか使われないわけで......まぁ方針次第ですが。
全体的にマークアップやスタイルシートに多くの紙面が割かれている点や、関連する話題がどちらかといえば広く浅く解説されている点も、自分が感じた物足りなさの原因にあるかもしれません。とはいえ冒頭に書いたように、日本語で書かれたおそらく日本初のRWD専門書であるからして、その価値なり業界への貢献というのは決して小さくはないと思います。もしRWDの根底にある概念なんかを掘り下げたいなら、境祐司さんの書かれた『ウェブレイアウトの教科書』を合わせて読むとちょうど良いかも(境さんの本が理論編で本書が実践編みたいな役割分担)。なので、「これから」RWDに取り組まんとするWebデザイナー、Web開発者の方は双方をチェックすると良いと思います。加えて、本書のFacebookページにはRWD関連の話題が割と頻繁に投稿されているようなので(いつまで続くか存じませんが)、そちらも要チェックです。