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「国際宇宙ステーション『きぼう』が拓く有人宇宙活動」シンポジウム

2月14日の覚え書き。東京国際交流館で開催された「国際宇宙ステーション『きぼう』が拓く有人宇宙活動」シンポジウムに参加しました。内容については、

あたりに素晴らしいまとめが既にあるのでそちらを参照のこと。以下、個人的に気になったことなど覚え書き。

「きぼう」で獲得した有人宇宙技術

JAXA白木理事の講演。恐ろしいまでに駆け足の講演で、スライドに書かれている内容を単に端折っただけのような印象。あまりにも早口だったものだから(人のこと言えませんけど)、失礼ながらこの御方は講演内容を聴衆に理解して欲しいと思ってお話されているのだろうか?と疑問に思ってしまったほど。時間的な制約が大きかったゆえに「致し方なく」そのようなスタイルになってしまったのだとは思いますけど、ならば無理に講演などせず、スライドはWebで公開するなり紙に印刷したものを配布するだけにして、ほかの講演やパネルに時間を割り当てたほうが、白木理事にとってもイベント全体にとっても良かったのではないかと。

「きぼう」開発企業の視点

MHI福田氏の講演。JEMET(JEM Engineering Team)を組織した話に始まり、数々の苦労話などを披露。個人的にはきぼうから得られた今後に向けての教訓、つまり(1)透明感のある開発計画、(2)シンプルな開発計画、(3)開発から製造への連続性、(4)計画的スピンオフというあたりが興味深かったです。有人宇宙システムか否か、国際的なプロジェクトかどうかにかかわらず、これらの教訓を活かすことは重要になりつつあるかなと。こと(4)については、物事が加速度的に変化しつつあるなか、柔軟性をもって環境変化に対応しなければならないけれど、限られた時間・コストの枠内でリターンの最大化を期待するうえで、スピンオフを意識することは大事だと思います。あと、質疑応答のなかでセントリフュージの打上げを迫った少年(誰)が面白かった!

国際宇宙ステーション搭乗体験談

主要5機関より、若田宇宙飛行士を含め計6名のISS長期滞在経験済み宇宙飛行士が大集合。といっても、基本的にはスライドと公式映像をバックに流しながら、あらかじめ決められた順序で各々の体験を紹介していくという、個人的にはやや面白みに欠けた構成。せっかくこれだけ豪華な面子が揃ったのだから、時間枠をもっと広げて、宇宙飛行士同士のかけあい、意見交換なり議論を聞かせて欲しかったです。誰もがそれぞれの所属組織の代表性を帯びている以上、難しいとは思いますけどね……でも、あまり目新しい内容は聞かれなかったと思いますし、動画にしたってNASAのサイトにアクセスすれば見れるようなものだったわけで、そういう意味でちょっと残念。

パネルディスカッション - 有人宇宙活動の今後 -

シンポジウム開始前は正直期待していなかったのですが、終わってみれば一番楽しめた時間帯がこのパネルディスカッション。期せずして、有人宇宙開発に対しどちらかといえば冷ややかな立場を立花隆氏が取ってくださったおかげで、多少なりともパネルディスカッションの格好がついたというか、面白いやりとりを聞くことができました。

中国のプレゼンスが大きくなりつつあるなか、軍事予算をつぎこめないがゆえに宇宙開発の予算確保に苦しんでいる日本の宇宙開発の未来は暗い!とする立花氏の指摘は興味深かったです。ただ、軍事をほとんど絡めることなく今日あるまでに技術を高めてきた点を自分は誇りに思うし、その点はもっと国内外に積極的にアピールすべきではないかと思うんですけど、どうでしょうね。また長谷川氏が言われたように、ISSに独自技術をもって参加した結果として宇宙開発分野での発言力が増していたり他をリードする立場になることができたのなら、予算が取れない/削られるのは単にそれらが日本国内で正当な評価を得ていないか、得ていたとしても「ちゃんと」広報できていない、ないしその両方が原因なのかなと。いずれにしても非常に歯がゆく勿体ないような印象。

立花氏はまた、宇宙開発はコストパフォーマンスが悪い、もっとコストパフォーマンスに優れたサイエンスが他にある(その例がSPring-8?)というようなことをお話されていました。しかしそもそも、日本という「国の」グランドデザインとして技術立国を標榜するならば(資源に恵まれない以上標榜「するしかない」と自分は思っていますが)、そして世界の宇宙開発における現在の日本のポジションを正しく評価するならば、他のサイエンスとの優先順位はさておき(ところでサイエンスのコストパフォーマンスってどう計測・比較されているのか知りたい)、もう少し予算が宇宙開発に割かれて然るべきだと思うんですが……無論、使途は有人に限らず。結局のところ、すべての元凶は科学技術に対する国のグランドデザイン不足なのでは?などと感じました。

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