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Fw: 職員のまじめさが役に立たない自治体サイトをつくる

東洋大学の山田先生がアゴラに寄稿された、職員のまじめさが役に立たない自治体サイトをつくるという記事を読みました。文字サイズの変更や音声読み上げといった、一見するとWebサイトのアクセシビリティに真摯に取り組んでいるように映るものの、実際のところそれが必須というわけでもなければ必ずしも障害当事者にとって役に立つものでもない......というのは、この覚え書きでも過去に何度か書いてきたつもりだけれど(例:文字サイズ変更ウィジェット晴眼者がよかれと思って作ったUI?)、山田先生のようなお立場の方が真正面からそれらをバッサリ斬り捨てている様は、素晴らしいの一言:

しかし「文字サイズの変更」ボタンは無用の長物である。障害を持つ利用者はブラウザでテキストサイズを変更し、検索ウィンドウに大きな文字で自治体名を入力して、自治体サイトにたどり着くからだ。自治体のサーバーで動く自動翻訳は、ネット型の自動翻訳(たとえばGoogle翻訳)に比べて改良が遅れるので誤訳の恐れが高い。

役に立たない無用な長物を調達するために余分な費用を払うのはもったいない。まじめなゆえに、無駄をしてしまう行政職員は気の毒だ。行政職員に対して最新の技術動向を伝える機会を増やす必要がある。システムベンダーも無駄を承知でそんな機能を売り込むのはやめていただきたい。

そしてこの記事の続編、最も役に立たない自治体サイトの機能では、色変更ボタンに言及。前景色と背景色を変更するという、これまた一見すると弱視の方向けにとても親切な機能を提供しているかに映るものの、そもそもその手の(色を反転するような)機能は昨今のOSであればネイティブで備えており、また弱視の方はWebブラウザに限らずあらゆるアプリでその手の反転を必要としかつ有効にしているわけですから、わざわざ頑張ってWebサイトのいち機能として備える必然はないわけです:

実はこれが一番役立たない機能。弱視の人はそもそもパソコンを白黒反転に設定しているからだ。Windowsパソコンの場合には、『設定』→『簡単操作』→『ハイコントラスト』で、コントラストを合わせられるようになっている。これを設定したのちに『アゴラ』を開けば次のように見える。

これら「役に立たない」機能が、公的機関のWebサイトからいつまでたっても消えてなくならない背景として、山田先生が指摘されているように、担当職員の皆さんがWebアクセシビリティの最新動向になかなか追いつけていないという実態はあると思います。数年おきに異動で担当者が変わってしまうような環境では、前任から現状を引き継ぎ維持するだけでも精一杯(少なくとも、その道のプロが組織に育ちにくい)という状況は、比較的起こり得ると思っています。

そしてまた、公的機関同士のあいだでの横並び意識(隣の自治体サイトに付いている機能は、自分たちのサイトにも付けなければいけない、付けなかったら負けと思う病)だとか、見た目に分かりやすく「Webアクセシビリティ頑張ってます」アピールをする手段として根強い人気があるというのも、背景にあるのではないか......とも思います。まぁこれらはいずれも完全に僕の個人的な邪推であって、はずれていて欲しいですが。

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