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遥かなる未踏峰

ヒマラヤトレッキング2025春の道中、読み終えたのが『遥かなる未踏峰』の上・下。買ったのは1年近く前のことだけど、しばらく読まない間にすっかり脳味噌が小説の類を受け付けなくなってしまってね......。

旅行中なら、まとまった読書の時間を取りやすく、登場人物や前後のつながりを短期記憶に格納しやすいと思ったから。そもそも日本にいるときと比べエベレストが目と鼻の先にある状況で読むにはうってつけの、エベレスト初登頂がテーマの本だしね。

人は窮地に立たされると神の存在を信じる必要がある。

上記は、上巻からの引用で、主人公のジョージ・マロリーがモン・ブランで雪崩に巻き込まれたシーンでのくだり。牧師の家庭に生まれた来歴などを踏まえるなら、実に味わい深いくだりだなと。

最も優秀な登山家を参加させないというだけで失敗するとわかっている企てに、どんなに短くとも半年も妻や子供を置き去りにして参加する気にはとうていなれません

上記も、上巻からの引用。優れた登山技術を有するフィンチを隊のメンバーから外そうとの方針に抗おうとマロリーが発した台詞。そう企てた連中を精一杯、罵ってやろうという気概に溢れたフレーズで、素敵。

本来なら自分が成就すべきだった夢をもっと劣った他人が成就するのをご主人が見るようなことになったら、終生後悔するのはあなたかもしれませんよ

こちらは下巻からの引用。マロリーの妻、ルースに向けてスコット未亡人の発した言葉。夫=マロリーを引き止めるな、エベレスト遠征に行かせてやれ、と説き伏せているシーンなのだけど、なにせスコット未亡人だけに言葉の重みが違う。きっついなーと思いました。

自分の命よりきみのほうが大事だと気づくのにこんなにかかってしまって申し訳ない。どうか許してくれ。

これは、マロリーがルースに書いた手紙からの引用。同様の、愛情に溢れた手紙が数多く本書には登場するのだけれど、この一節はなかなか印象的でした。

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