デザインシステムの育て方
著
『デザインシステムの育て方 継続的な進化と改善のためのアプローチ』を読みました。言わずと知れた『Design That Scales』の日本語訳であり、ヤスヒサさんが監修をされた本です。英語の書籍の日本語版にありがちな、読みにくい訳だったり日本人的に理解しにくいジョークの類は皆無だったので、安心して周囲にオススメできます笑。
大変なのは作る作業ではなく、デザインシステムを現場で活用し、組織の文化を変えることで、そして変化が組織に浸透して根付くには時間を要する。
デザインガイドライン案件においても、それを形にするところまでで満足してしまったり息切れしたりする話は稀によくあるので......すごくわかる話です。上意下達的に捉えていて、それを作りさえすればみんな(誰)勝手に読んだり活用してくれるなどという、無邪気さ全開な考えの持ち主も、稀によくいたりいなかったり。
「デザインシステムをどう作るか」ではなく、「現場の人たちの成功にデザインシステムがどう貢献できるか」
そこは本当に大事ですよね......デザインシステムなりデザインガイドラインを、何の・誰のために作るのかっていう話は、カジュアルに忘れ去られがちな気がしていて。巷に溢れる関連記事にしたって、割とこうテクニック論というか、ノウハウ・ドゥハウに偏りがちな傾向を、よく感じます。そういう内容のほうがウケるし、表層的なぶん記事化しやすくもあるだろうし。
人間は、労力が最も少なくてすむやり方に従う傾向がある(ジップの法則とも言う)。選択肢でも、動物でも、人でも、優れた設計の機械でも、一番抵抗が少なく、エネルギーを節約できる道を選ぶのだ。そしてその道は多くの場合、現状維持を指す。
ジップの法則、初耳でした......というのはさておき、言い得て妙。「水は低きに流れ、人は易きに流れる」大前提をどう崩すかって、そりゃ難しいわけで。上記はプロダクトチームにデザインシステムを売り込む文脈で語られているくだりで、パイロットプロジェクトに取り組むってのが一応の(引用した章の次の章で示される)解なんですけど。
デザインシステムの墓場はたいてい、誰も使わないコンポーネントであふれているのを思い出してほしい。「使わない」という言葉には、いつか使われる可能性はあるという含みがあるが、その「いつか」は決してやって来ない。
この手の爽快感ある言い切りが、本書には何度か出てきた気がします。しかし実際、然もありなんですよね......可能性で云々しはじめたらキリがなくて、あれもこれもと際限のない「足し算」が始まってしまううえに、誰もその結果の負の側面を論じない(し、ましてや「引き算」しようともしない)。
業界経験が浅い人や一緒に仕事をした人からまず何を学ぶべきかと訊かれたときは、常にHTMLと答えている。ウェブプロダクトを作りたいなら、すべての道はHTMLに通ずる。
いやーこれもいいフレーズだなー賛同しかありません。HTMLを軽視するいっぽう、JavaScriptフレームワークを過剰に持ち上げる風潮を嘆く記事を見かけるようになって久しいけど、著者のDan Mall氏にはこれを叫び続けてほしい(謎)。最後に......デザインシステム界隈に大変お詳しく、たまにその手の英文記事を無償で翻訳・公開してくださっている佐藤さんのnoteから、あわせて読みたい: