使える 弁証法
著
田坂広志先生の『使える 弁証法―ヘーゲルが分かればIT社会の未来が見える』について覚え書き。弁証法については、すでに他の著書やYouTubeで拝見できる講演である程度は知っていたし、ゆえに既に知った内容が少なくなかった印象ですが、復習ということで。
「螺旋的発展」が起こる時間のスケールが、我々の「人生の長さ」に比べて、非常に長かったため、我々は、自分の人生の時間スケールにおいて、その「螺旋的発展」の姿を見ることはできなかったのです。
世の中の変化のスピードが加速しているがゆえに、「螺旋的発展」の姿が見やすく変化したのだ、という解説。納得感は抱きつつも、ただそこで考えるべきは、なぜ世の中の変化がどんどん速くなっているのか、そしてそれは今後も加速し続けるのかという点かなと。
世の中の変化が緩やかだった時代には、その変化を「直線的な変化」であると考えても、大きな間違いはなかった。大局的には「螺旋的発展」をしていても、局所的に見れば「直線的発展」に見えるからです。
螺旋状の何か、の両端を引っ張れば直線状に見えるわけで、イメージとしては然もありなん。ただ自分の認識としては、どんな螺旋もうんと短く切り取れば直線状なわけで、結局はいつからいつまでの時間を切り取ったうえで変化を捉えるか、短期と長期の両方で捉えたうえで両者を行き来しながら思考を深めるようなことが必要ではないかと。
「合理化」と「効率化」のために、ひとたび消えていった機能が、その「合理化」と「効率化」がある段階に達したために、復活してきたのです。
言葉を換えれば、「均質化」と「個性化」の「螺旋的発展」が起こったのです。
これもめちゃくちゃ面白いお話。ただ、うんと大局かつ極論に振るなら、宇宙全体としては均質化に向かうはずで、その先はどうなるのかなと。この宇宙が極限まで均質化した先に個性化は起こり得るのか、みたいな視点。まぁ宇宙論には詳しくないですし、単なる妄想ですが。
もし我々が、「螺旋的発展」の法則や「否定の否定による発展」の法則を深く理解し、これから市場において、何が「復活」してくるのか、どの方向に「反転」が起こるのか、次なる「主戦場」はどこに向かうか、ということを洞察するならば、自然に、打つべき戦略は決まります。
古くから「歴史は繰り返す」みたいなことが言われてきましたけど、それはある意味「螺旋的発展」の言い換えであったのかな、とぼんやり思いました。ただし、それは先生が主張されているとおり、完全に同一の繰り返しではなく、発展したうえでの繰り返し、ではあるのですが。
世の中で見られる「非連続的変化」や「飛躍」、さらには「進化」と呼ばれる現象の背後には、まさに、この弁証法の「量から質への転化による発展」の法則があるのです。
昨今話題のGPTの進化なんかはまさにこれ、ですかね......AI技術の進化を田坂先生がどのように見ていらっしゃるかに興味が湧きます。