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目に見えない資本主義

田坂先生の『目に見えない資本主義—貨幣を超えた新たな経済の誕生』を読みました。2009年の発行ということで、さすがに陳腐化して映るだろうなと覚悟して読み進めたのですけど、そこまで古臭く感じることはなく、むしろ気に入ったフレーズがそこかしこにあって、マーカーを引きまくりました。

これからの時代に起こる変化の多くは、「連続的」な変化ではない。過去と断絶した「不連続」な変化、「飛躍的な変化」が起こる。

ChatGPTが大流行(少なくとも私の周囲では)している昨今をまさに見通していらしたようなくだり。不連続といえばコロナ禍もそうですね。ロシアのウクライナ侵攻も、それを予言していた人はいたかもしれないけど、個人的には青天の霹靂で。かくも世界が予測不能になってしまうとはなあ。その要因として先生は上記にもある「不連続」に加えて「非線形」「加速度」を挙げてらしたけど。

マルクスの思想を深く読み解くならば、彼の思想は、それjほど単純な「資本主義批判」でもなければ、「ガン資本主義的」でもないことが分かるだろう。

マルクス!!田坂先生の本でマルクスの名を目にしたのはこれが初めてかもしれない。ともあれ、2年前に読んだ『人新世の「資本論」』の内容が、私の脳内において田坂先生とこのタイミングで繋がるとは、なんとも不思議な感覚というか、僥倖だろうか?

複雑系としての市場においては、様々な循環構造が形成され、それらの中で、「好循環」や「悪循環」のプロセスが発生し、変化の強化と加速が起こる結果、ときに、自己組織化と創発のプロセスが生まれ、自然に秩序や構造が形成されていく。

うーん、つくづく、もっと早くに本書を読んでいれば......と思うことしきり。経済の複雑化がバタフライ効果をもたらすのはそういうことだったのね。まさに複雑なものには、生命が宿るわけで、操作主義とか金融工学への批判にも繋がるわけですな。やはり、複雑系に関する著作2冊も読まねばなるまい。そして

企業や個人の倫理基準や行動規範の確立という方策を、長期的な視点で、必ず進めていかなければならない。

という、自律だとか倫理へと話が進んでいくあたり、かなり興奮しました。いや本当に、AI技術の社会実装が急速に進みつつあるなかで、今ほど倫理観が強く求められる局面も過去になかったのでは?とか思っていたので......先日宇宙倫理学教育プログラムの一般コースに落選したのは残念だったけど、倫理学はある程度、自学自習しないといけなさそうだ。

人間の精神の「成熟」とは、「見えない価値」が見えるようになること。

このくだりの少し前には若い時代には、「自分」しか見えていない。それゆえ、「相手の心」が見えていないともあって、ぐうの音も出ません......果たして自分にはどれだけ、「見えない価値」が見えているのだろう。無論、自信はほとんどありません。

いつのまにか、現在の経済学は、単なる「手段」に過ぎなかった「経済成長」が、人々を幸せにするための唯一の手段であると思い込んでしまっている。

首を縦に振り過ぎてもげそうー。加えてさらに、極めつけが以下のくだり。これを深く認識のうえ、これから先を生きていきたい。

様々な国家と民族が共存していくために、「多様な価値」を認め合う「多元主義」(プルラリズム)に向かっていく時代において、実は、経済学だけが、「多様な価値」を前提とした理論体系になっていないことに、我々は気がつく必要がある。

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