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エネルギーをめぐる旅

長らくほしいものリストに入れっぱなしだったのを、昨年末だったか値段の下がったタイミングで購入していた『エネルギーをめぐる旅——文明の歴史と私たちの未来』を読了。つくづく凄まじい本で、著者の慧眼に嫉妬すら覚えます。何きっかけで本書を知ったか忘れましたが、出会えたことにただただ感謝。

農耕を始めたことによって人類は、大地に降り注ぐ太陽エネルギーをこれまでになかった規模で取り込むことができるようになりました。

『イーロン・マスクの生声』を読んだ際、世界のほぼすべてが太陽エネルギーで動いているという言葉に注目していたけど、農耕を人間が太陽エネルギーを取り込むプロセスとして捉えたことは過去に一度もなく、それが新鮮だったしある意味、感動もしました。

時間の流れを感じ取ることができるのは、実のところ熱力学の第二法則が存在し、事物が散逸していくことで世の中が一方向に流れていくからなのです。

見事としか言いようのない感想を抱きますが、それは同時に自分がいかにこれまで第二法則を浅くしか理解してこなかったかということの証左でもあります。ひとたび不可逆性というものが時間の本質、正体と認めてしまえば、なるほど納得。

人類のこれまでの活動を整理していくと、人類の歴史は、「時間を短縮すること」、いいかえるならば「時間を早回しすること」に価値を見出してきた歴史であるともいえます。

その時間の早回しってやつが資本主義によって強制され続けてきたと私は考えていて。時間の早回しが物質循環を加速させ、結果として資源の枯渇や環境破壊を招いている......という認識なのだけど、エネルギー視点からそれを換言している印象を本書のところどころに感じました。

火とは私たち生物の化身といってよいものです。火を燃やすということは、生物に絡め取られた炭素を再び空へと解き放ち、炭素循環のループを回すといううことにほかなりません。

なんとも詩的なフレーズだけれど、これまで生きてきた中でそんなふうに火を見つめたことがなかったから、感動しましたね。寺田寅彦の『茶わんの湯』にも通ずる何かを感じます。小学生のとき参加した林間学校のいちイベント、キャンドルナイトを思い出しては、当時こういう目線でろうそくの火を眺めることができたらきっと今と全然違う大人になっていただろう、なんてことも思いました。

未来は自らの意志の力で変えていくことができる。私たちはそこに希望を見出して、第二法則との共存を目指して行かなければなりません。

資源枯渇、環境破壊、持続可能性みたいなテーマについて想いを巡らせるとき、大抵は悲観的な(少なくとも楽観はできない)感覚に支配されがちですが、著者の力強い未来への期待を上記からは感じました。もはやSDGsのグローバル目標に17個も必要なくてただ唯一、「第二法則との共存」をゴールに掲げそれに向かって人類全体が歩みを進めるべきでは......とすら感じます。

人類が工業プロセスを使ってモノを作ることで低エントロピーの資源を消費し続ける限り、完全な意味での持続可能な社会が訪れることはないでしょう。

肝に銘じます。

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