「野口宇宙飛行士から皆様へのご挨拶」の書き起こし
著
昨日、野口宇宙飛行士が退職に関する記者会見を行ったのですけど、それに関連してJAXAのWebサイトに掲載されたJAXA | 野口宇宙飛行士 記者会見というページの出来が酷すぎました。検索避けを必要とする謝罪文でもあるまいし、どうして肝心の挨拶文を画像で(しかも代替テキストには「挨拶文」のたった3文字で)実装したのでしょう? JAXA広報部は、もっと「ちゃんと」Webコンテンツを制作すべきです。
いやもちろん、文章の一部で表示に採用している書体に(おそらく野口宇宙飛行士ご本人の)強いこだわりがあって、しかしそのためにWebフォントを採用するのは時間的・費用的に難しいといった事情は、容易に推察できます。できるのですけど、であればせめて画像化するのはその特殊なフォントを使っている部分にとどめ、なおかつ代替テキストを「ちゃんと」提供していただきたいものです。
JAXAの前身であるNASDAのWebサイト運営にかつて携わっていた身として、大変情けなく思いますし、アクセシビリティおじさんとしては実に腹立たしい。......てなことをJAXA広報部に直訴しても良いのですが、というか本来すべきなんでしょうけど、少しでも早く件の挨拶文の内容を読みたい人には読めてほしいので、自分が以下にサクッと書き起こします(一応ruby要素とか使ってみたけど微妙かも)。
お世話になっている皆様へ
功遂身退、天之道也。
功遂げ身退くは、天
の道なり。 (現代語訳;りっぱな仕事を成し遂げたら、その地位にとどまらず退くのが、自然の理にかなった身の処し方である。 出典:中国春秋時代の思想家、老子の作品『道徳経』九章)
日頃の皆様方のご高配に深く感謝申し上げます。
この度、本年6月1日をもちまして宇宙航空研究開発機構を退職致しますので、ご報告申し上げます。
1996年に宇宙飛行士候補者として選抜されて以来、多大なるご支援とご指導を頂きましたことを改めて感謝申し上げます。3回の宇宙飛行を無事成功させた今、搭乗機会を待っている後輩宇宙飛行士、そして新たに選抜される新人宇宙飛行士に道を譲るべきと考え退職を決断いたしました。今後は研究機関での活動を中心に、海外宇宙機関などでの26年に渡る業務経験を活かした宇宙関連事業への助言、そして我々の未来を担う、総合知を備えた人材育成教育に尽力したいと考えております。
終わりに、宇宙を目指す次世代の若者へ、岩手出身の国民的詩人・童話作家である宮沢賢治の言葉を贈ります。宇宙は人類共通のフロンティアであり、我々の「未来圏」そのものです。今後も人類の宇宙への挑戦に応援宜しくお願い申し上げます。
諸君の未来圏から吹いて来る
透明な清潔な風を感じないのか(出典:宮沢賢治『生徒諸君に寄せる』)
2022年5月25日
野口 総一
なんでこんなおせっかいをするかといえば、挨拶文の内容にちょっと感動してしまったというのもありますし、野口宇宙飛行士とは1997年夏のISU参加中に一度、NASA Road 1沿いのベトナム料理店で食事をご一緒させていただいたご縁があって(ご本人は覚えておいでではないでしょうけど)、勝手にシンパシーを感じているからです。野口宇宙飛行士、お疲れさまでした&今後ますますのご活躍を祈念します。