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星出宇宙飛行士の「有人宇宙開発はSDGsに貢献」というコメント

「健康、産業、教育...有人宇宙開発は人類に貢献」ISS船長務めた星出さん | Science Portal - 科学技術の最新情報サイト「サイエンスポータル」というインタビュー記事を読みました。興味深かったのは、「国連が2015年に「SDGs(Sustainable Development Goals、持続可能な開発目標)」を採択した。人類が諸課題を克服してより良く生きるため、有人宇宙開発はどう貢献するか。」という質問への回答。

自分の研究テーマにも直結するところではあるので、星出さんに対し悪気は一切ないけれど、敢えて批判的に読んでみます。

宇宙開発自体が、究極には人類のための大きな活動だ。ISSの各種の実験が、健康や産業、技術革新に役立つ。無重力環境を使い、例えば生物学・医学分野ではタンパク質の結晶を生成する実験を続け、また飛行士の体も使って寝たきりや骨粗しょう症に関わる知見などを蓄積している。教育機会の提供も重要だ。例えば今回の長期滞在では、(学生がISS内の)ロボットを動かすプログラミングコンテストや、(国内外の大学などの)超小型衛星の放出などを行った。

微妙にSDGsをスルーしているような回答。記者の質問を「ISSは人類の役に立っているのか」に読み替えたうえで答えていらっしゃるようにも読めます。必要とされるリソースの大きさからして、宇宙開発自体が、究極には人類のための大きな活動というのは誰もが認めるところでしょうけど、それをもってして有人宇宙開発がSDGsの達成に貢献し得るとは言えないはず。

またISSの運用自体、サステナブルエンジニアリング(持続可能性のための工学)でもある。電力は太陽エネルギーで賄い、飛行士の尿を水に再生して利用するなどして、できる限り地上から物資を運ばないための技術を磨いている。(月探査に向け)より効率化しなければならない。ごみをなるべく出さない工夫、食料自給に向けた技術開発もある。これらの成果は地上に還元でき、SDGsに貢献できると個人的には思っている。

はい、おっしゃる通り。しかし、同じ成果を求めるのに「わざわざ」地上400キロの高度で行う必然はなくて、Biosphere 2ほどの規模は難しいにせよ、地上に閉鎖環境を作って技術を磨けば良い、などと反論することもできるはず。より高いレベル? の閉鎖環境を求めるなら深海や極地でも良い、それでも宇宙で行うより低コストで技術開発ができるのでは。そういう批判への回答は、お持ちかしら。

ISSの実験は地上の人々に役立つことが究極の目標だが、(月や火星へと)より遠くに行くためのテストベッド(試験環境)としても活用している。例えば二酸化炭素除去や水再生、トイレなど。新技術が、ISSより遠くに行って問題なく働くのかを確認する。行ってからうまくいかなかったら大変だ。より良い物を将来につなげることは、非常に意義がある。

より良い物を将来につなげることは、非常に意義がある、これも誰もが認めるところでしょう。しかし、上記のコメントはまるでより遠くに行くことに全人類的な承認が得られているかの前提を感じます。宇宙倫理学の切り口で問題視され得るのは、そこですね。そもそもより遠くに行くことは、どの程度必要なのか。記者の質問に立ち返るなら、その行為は人類の諸問題の克服とどう関係しているのか? その点にまず答えていただきたかったですね。

......だいぶ意地悪なことを書き記しましたけど(苦笑)、自分なりに星出さんのお立場は理解しているつもりであり、記者の質問に真正面から向かい合わずとも「それっぽく」答えることが要求されてのことだと解釈しています(掲載前に内容を仮にJAXA広報部がチェックしていたなら尚更)。ただ自分は、社会課題と宇宙開発の関係をもっと掘り下げて考えていきたいと思っているし、そこにこそ今後の宇宙開発広報の命題があると信じているので、なんていうか、頑張りたい。星出さんのますますのご活躍を祈りつつ。

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