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【転載】NYで新型コロナウイルスに感染し、回復された方の体験談

新型コロナウイルスに感染した方の体験談はWeb上でいくつか目にするようになってきたけれど、ついに......という感じで、自分の割と身近なところから共有いただいた体験談を、つい先ほどメールで読みました。

その方は、自分と同じ1997年にISUに参加され(その点では同輩なのですけど)、大変活躍されている宇宙業界の大先輩です。もう何年もNYに駐在されているのですが、新型コロナウイルス感染のため4日間入院、4月3日に退院し現在は自宅療養中とのこと。

日本でも病院側がコロナ患者の100%受入れができなくなってきていると聞いています。自宅でいかに凌ぐか、病院に行くべきタイミングはいつか、など悩むことが多いと思いますので、ご参考になれば幸いです。

なお、以下の情報はあくまでも個人的なものですので、病院やお医者さんにかかることが出来れば、その指示に従って下さい。ただし、NYの病院の先生からの指示、ホームドクターの指示、駐在員向けの医療相談(日本にいるお医者様から電話でアドバイスが貰えるもの)、日米の医者の友人からのアドバイスに基づいていますので、ある程度一般的に通じるものと思います。

情報はどう取り扱っていただいても結構とのことですので、以下に原文ママで転載させていただきます。

1. 解熱剤はアセトアミノフェン系のものを使用する。

  • 退院指示書に明確に書かれています。イブプロフェン系のお薬(ロキソニンなど)もあるのですが、確固たる証拠はまだないものの、イブプロフェン系は、私のように従来ある程度健康だった人のコロナの症状を悪化させる可能性があるので服用を避けること。日本の市販薬だとセデスやノーシンがアセトアミノフェン系です。ただしイブプロフェン系のクスリを混ぜているのもあるようなので、パッケージの裏の情報を確認してください。指示書ではTylenolを飲み、Advil、Aleve、Motrinは飲まないように、とされています。(イブプロフェンの使用に関しては、個人差もあり、専門家の中でも見解が分かれているようですので、ご注意ください。今後の調査研究が待たれるところです。)
  • 高熱が2週間ほど継続する場合があるので、ある程度の量を準備しておけば安心です。ただし、徐々に効かなくなってきますし、アセトアミノフェンは肝臓に悪影響を与えるので、定められた容量を守るべきです。ちなみに、入院した際に体温が40度を超えていたのですが、1.5gのTylenol(一日上限の半分程度)を飲まされました。入院中のある日はTylenolの使用上限に達したので、Advilを飲まされましたが、1時間後に嘔吐してしまい、それ以降は飲んでいません。イブプロフェン系のクスリは、胃腸と腎臓に悪影響があるようです。

2. パルスオキシメーターを購入し呼吸器系のモニタをする。

  • パルスオキシメーターは、指先で血中酸素濃度が測れるセンサです。日本でもAmazonでまだ買えるようですので、購入をお奨めします。通常は96%以上で、90%以下になると呼吸困難状態で、すぐに救急車を呼ぶべきレベルです。
  • NY州・市が出している病院にかかるべきクライテリアでは、①高熱(37.5度以上)が4日以上続き、②呼吸が苦しくなっていることが挙げられています。3/21に熱が出始めて4日目に呼吸が苦しくなった感じがあったので、3/24に救急車を呼びました。NY州と、NY市が行っている電話サービスがあるのですが、そこに電話をしてもゴミ収集のスケジュールや公共交通機関の情報などが流れてきて、医療関係の情報にたどり着けなかったので、911に電話をしたところ、5分程度で来てくれました。病院では、胸部レントゲン、呼吸音のモニタ、血中酸素濃度を測られ、全て問題がない(血中酸素濃度96%でした)ので、2時間程度で帰されました。
  • その後、1週間高熱が続きTylenolを飲んで凌いでいる間に、パルスオキシメーターが届きモニタを開始しました。クスリが切れるのが最初は6時間程度だったのですが少しずつ短くなって最後は4時間程度しか保ちませんでした。切れてくると悪寒が出始めて身体がガタガタ震えてきて高熱が戻ってきます。猛烈な頭痛はクスリを飲んでもあまり改善されませんでした。3/31に血中酸素濃度が92%まで下がり、熱が40度を超えたので、再度救急車を呼び、今度は入院を許可され、点滴と酸素供給(鼻から簡便に酸素を送るもの)を受けました。お医者さんが、コロナ検査が正式にできる、として検査をしてくれ、翌日夜に陽性を告げられると同時に、コロナのクスリ(不明ですがマラリア抗生剤と思われます)を処方して貰いました。
  • 入院3日目の夕方に先生から電話があり、症状が良くなったので退院させたいと言われました。まだ38度を超える熱が続いていて、しんどかったので、もう一泊させてもらうように交渉しました。すると身体状況の評価をする、と言われ、病室内を歩き回って酸素濃度を測られました。90%以下だともう一泊させる、と言われていましたが、結果は93%でした。が、先生からもう一泊の許可が出ました。その夜に同じ部屋に別の患者さんが入院してきて相部屋になりました。

3. 抗生物質の使用は慎重に。

  • 日米の医療方針の違いが大きかったです。病院に受け付けてもらえず耐え忍んでいる間に、日本のお医者様から、抗生剤を試しに飲んでみろとアドバイスを頂いたので、日本から持ってきていたフロモックスという抗生剤を3日間飲みましたが、結局症状は改善されませんでした。こちらのホームドクターにその旨を伝えたところ、原因が分からないのに、むやみに飲むべきではない。すぐに服用をやめろと言われました。抗生剤は腸内細菌も殺してしまうので、免疫が弱くなったり、本当に殺したい病原菌が耐性を備えてくるから、というのが理由のようです。
  • お医者様の指示があれば別ですが、自宅にある抗生剤は自分の判断で飲まないほうが無難に思われます。

4. 他人と会わない。

  • 世の中には、高齢のご両親のケアをされている方、基礎的な疾患がある方、ご家族にガンなどの難病患者や療養中の方がおられる方など、コロナにかかると死んでしまうリスクの高い人が大勢おられます。自分や家族がコロナにかかっているのに人と会うと、そういった人たちを死のリスクに曝す可能性があります。少なくとも、他人に迷惑をかけない様、コロナ患者とそのご家族は、他人と会わないようにすべきと思います。
  • 日本ではデリバリーサービスもまだ機能していると思いますので、そういったものを活用したり、買い物を友人に頼むなど、互助精神で乗り切って欲しいと思います。幸い我々は、仲良くしているご家族が野菜等を買って届けてくれるようになり、非常に助かりました。
  • 退院指示書には、家庭内隔離解除の条件として、①解熱剤を飲まずに熱が出ない状態が72時間以上継続すること、②咳などの症状が改善されていること、③症状が始まってから少なくとも1週間が経っていること、が挙げられています。日本の医者の友人からは、その程度に症状が収まってくると、例えコロナウィルスが身体に残っていたとしても、人に感染させるだけの力がなくなっているのとことです。退院後1週間経った際に(その間、平熱でした)、ホームドクターに相談したところ、そろそろ外出等をしてもよい、とのお墨付きを貰いました。
  • 家族の中で、まず12歳の子供がかかり、家庭内隔離をしていたのですが、元気になってきてリビングに出てくるようになり、妻の体調がおかしくなりました(味覚嗅覚障害など)。幸い、2人はすぐに回復したのですが、次に私が罹りました。高血圧のオッサンが一番症状が悪くなりました。家庭内隔離も限界がありますが、①手をこまめに洗う、②顔を触らない、ことを徹底することで、かなりの防御になるようです。

5. 救急車を呼ぶ。呼ぶ場合は夜を避ける。

  • 日本でどういう状況になるか分かりませんが、NYで救急車を呼ぶと、受け入れ先を見つけて連れて行ってくれるようです。3/24に1回目に救急車を呼んだ際に、近くの大学病院に連れていかれました。3/31に2回目に救急車を呼んだ際には、1回目の退院指示書を救急隊員に見せて、同じ病院に連れて行ってもらうように頼みました。
  • 米国の医者の友人からのアドバイスで、救急車を呼ぶなら夜を避けろ、医者やスタッフが不足してくるので、満足な治療を施して貰えない、というものがありました。確かに、1回目は夕方だったのですぐに治療してくれましたが、2回目は夜7時を過ぎており、治療を受けるのに高熱と頭痛に苦しみながら1時間以上ロビーで待たされました。
  • 携帯、充電器、下着などの着替え、身分証明書、保険証、メモや筆記用具、などを救急車を呼ぶ前に準備しておくと慌てずに済みます。ひょっとしたら、入院中に死んでしまう可能性があります。残された家族にできるだけ迷惑がかからないように、例えば携帯のパスワードや、銀行や保険等の情報は、事前に伝えておくか、あるいは病院でビデオを撮るなどして、情報として残しておくべきと思います。私はあと1日病状が続いたらビデオを撮ろうと思っていたところ回復できたので良かったですが、高熱と強烈な頭痛、下痢が続いており、食べ物も食べられなくなり、一時は本気でこのまま死んでしまうかもしれないと思いました。ちなみに、私で「中等症」らしいです。呼吸器系に症状が発展せず、ICUに入らずに済みました。「重症」の患者さんの苦しみがどのようなものか想像もつきません。
  • NYの病院の入院基準は、私の経験からすると、少なくとも高熱だけではダメで血中酸素濃度と両方で判断されているように思われます。(発熱がなくても血中酸素濃度が90%以下なら受入れられるかも知れません)

6. 退院後の体調をモニタし病状が悪化すれば再度救急車を呼ぶ。

  • 退院指示書に、①38.3度以上の発熱、②出血、③症状の悪化、④吐き気や嘔吐、が出た場合は、医者の指示を仰げと書いてあります。
  • また、高熱と呼吸困難の両方がある場合に限り、救急車を呼んで病院を再訪せよ、という指示があります。
  • 幸い、私の場合は退院後順調に回復しておりお医者さんや病院の世話にならずに済みました。ただし、退院2日後に尿が赤くなり驚きました。医者の友人の話では、高熱で筋肉が解けて血液中に入り、それを腎臓が処理しきれなくなると、赤い尿が出るようです。恐ろしい話ですが、これが続く場合、最悪は透析をすることになるようです。幸い1日だけで済みました。
  • このように、何らかの異常が後から出てくる場合があるようなので、体調のモニタをしっかりして、異常があればすぐにお医者さんに相談するとよいと思います。退院後1週間経ちましたが、今でも食後に少し体調が悪くなり寝てしまったりしています。

7. 回復期にはサプリメントを飲む。

これも米国のプラクティスかも知れませんが、奨められたものを以下に挙げます。

  • マルチビタミン:退院時に1か月分の処方を受けました。
  • アミノ酸:衰えた筋肉と内臓の回復に栄養価の高い食事、特にたんぱく質の摂取を奨められます。食物から採るのは限界があるようで、サプリメントで必須アミノ酸を採るとよいようです。
  • プロバイオティクス:退院時にマラリアに対する抗生剤を処方されました。抗生剤により腸内細菌が殺され下痢をします。良好な腸内フローラを取り戻すためにプロバイオティクスで優良な菌を身体に取り込みます。
  • ラクトフェリン:母乳に含まれる成分で免疫力を高めます。コロナ予防にも効果的なようです。

8. 最後に

  • よく言われることで事実ですが、死はいつ誰に訪れるかわかりません。しかし、コロナに罹った場合、死が「今」「自分」に訪れる可能性が高くなります。また伝染するので、自分だけで済まずに、死が「今」「自分だけでなく大事な家族・触れ合う関係者」に訪れる可能性が高くなります。
  • 日本は法律の強制力が欧米に比べて弱いので、政府として打てる手が限られているように思います。そうなると、社会の中の個人の責任として、自分自身で出来ることを進めることが重要になってくると思います。自宅待機をして人に会わないこと、が基本線で、どうしても出かけないといけない場合、自分がひょっとしたら無自覚で罹っている可能性も考えて、「人にうつさない、人からうつされない」よう、マスクを着用し、推奨されている社会的な距離を取り、手指の小まめな消毒、顔を触らない、といった対策を充分に行って欲しいです。
  • まだ大勢の方が電車に乗ってオフィスに出勤されている光景をニュースで見ると、心が痛みます。会社の経営者の方々は、ぜひ従業員の安全を考えて頂きたいです。その仕事はオフィスに来させてまで行う必要があるかどうか。現状の短期的な難局を乗り越えられたとしても、「従業員を大切にしない会社」が、今の時代、永続できるとは思えません。本当に必要な仕事がある場合は、オフィス近隣のホテルや民泊に宿泊場所を確保し、また近隣の飲食店に3度の食事を配達して貰うなどして、通勤や外食によるリスクを可能な限り削減するなどの対策を真剣に検討して頂きたいと思います。
  • 医療関係者の罹患数が高いことも本当に心が痛みます。犠牲的精神で働いておられて、コロナの恐ろしさを目の当たりにされている方々が罹患してしまう。人にうつしたく無いという理由で、病院の駐車場に車を止めて、何日も車中泊をしながら激務をこなしておられる看護師の方々が報道されています。せめて宿泊場所の確保や、食事時間の確保ができる対策ができないものか。。。何とか医療関係者の方々の負担を減らせるよう、知恵を出して助け合い、支え合って頂きたいと思います。
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