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WCAG 2.2のFPWD

Web Content Accessibility Guidelines(WCAG)2.2のFirst Public Working Draft(FPWD)が、昨日付けで出たそうで。その内容については、同僚の中村さんがWCAG 2.2の最初の公開作業草案が発行されましたって記事でわかりやすく解説してくださったので、そちらを参照いただければと。今のところ、WCAG 2.1から新たに追加された達成基準は1つだけだけど、Web Content Accessibility Guidelines (WCAG) 2.2 in Development | W3C Blogには

We expect to add up to 12 more success criteria to WCAG 2.2. The new success criteria address user needs of people with cognitive or learning disabilities, users of mobile devices, and users of ebooks. Note that success criteria in the Drafts may change or be removed before the final WCAG 2.2 is published.

とあって、予断を許さないもののAccessibility Guidelines Working Group(AG WG)としてはさらに12の達成基準を追加する考えでいるらしい。その点に関する私見は、先だって自分も勤務先のBlogで2020年のWebアクセシビリティという記事に書いた通り:

達成基準のさらなる充実(追加)は、ユーザーや利用状況の多様性に対し私たちWeb制作者が理解を深め、Webコンテンツをよりアクセシブルにするうえで大変喜ばしいことです。しかしそのいっぽう、新たな達成基準の検証方法をどうするか、検証にかかる時間的・金銭的コストとどう向き合うかなど、悩ましい側面があるのも事実。

数年前から、自分はアクセシビリティに限定されない、より広範な内容を扱うデザインガイドラインの作成やコンサルティングを多く手がけるようになったのですけど、そうしたプロジェクトで常々感じることの一つに、いかにガイドラインのボリュームを抑えるかがあります。守るべきルールや読むべき文字数が増え、ガイドラインが重厚長大になればなるほど、(残念ながら)読まれない・守られない可能性は高まるんですよね。

やはりガイドラインというのは、その周辺環境の充実とリンクしてこそ進化できるというのが持論です。周辺環境の充実を具体的に挙げるなら、いちいちガイドラインを読んだ人間が積極的に守る努力を払わなくてもルールを守れるようテンプレートやCMSなんかにルールを仕込んでしまうとか、あるいは教育に力を入れることで当たり前品質を底上げするとか、そういうことを指します。

話をWCAGに戻すと、昨年末に当覚え書きに書いた2019年のWebアクセシビリティ雑感とかガイドラインの功罪とか

ガイドラインが充実するのはありがたいし、それが法律によって「ある程度」強制されるのは致し方ないけれど、適合/不適合を検証するプロセスが今より遥かに省力化できる道筋(画期的な検証ツールとか)が見えないことには、正直つらさも感じます。

と記した通り、達成基準を増やすなら並行して、より効率的に達成基準を満たす手段や、満たしているかどうかをより効率的に確認できるツールの開発と普及、加えてWebデザイナー/開発者への教育も進んでいかないと、本当にしんどい。Webのアクセシビリティって、そもそも制作者だけが頑張れば良い話ではなく、Webブラウザや支援技術なんかのベンダー、それに障害当事者を含むユーザーもみんな一緒に学習・成長・進化する必要があるわけで......「みんなで幸せになろうよ(『機動警察パトレイバー』の後藤隊長談)」。

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