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2019年のWebアクセシビリティ雑感とかガイドラインの功罪とか

Webアクセシビリティ Advent Calendar 2019、最終日を迎えました。2013年より7年連続で作成させていただいてきたこのAdvent Calendar、今年はついに? Smashing Magazineでも取り上げられ(紹介文にThe calendar is moderated by @hokaccha.とある理由は謎)、いよいよメジャーになった感があります(なってはいない)。でもって今年も、ラストは自分の毒にも薬にもならない駄文で締めくくらせていただきますので、ご容赦ください。

今年を振り返りますと、2018年までに増して、Webアクセシビリティに関する記事やイベントについて見聞きする機会が増えたように思います。それ自体は大変喜ばしいことで、Webアクセシビリティに理解ある多くの皆さんの尽力の賜物以外の何物でもなく、いよいよキャズムを超えたかの印象すら抱きます。ただ残念ながら、自分がアンテナを向けている範囲に限ってはですけど、その多くがWeb開発者やWebデザイナーに向けたもので、企業のWeb担当者(≠制作者)や経営者などの意思決定層に向けたものは少なかった気がします(あくまで気だけ)。

今年7月に登壇させていただいたWeb広告研究会 月例セミナー「誰のためのUX? ~アクセシビリティを再確認しよう~」は、そういう意味では少しばかり貴重な機会だったように思います(どういうわけか最近になって5ヶ月遅れでレポート記事がWeb担当者Forumに掲載されていたりします)。自分としては来たる2020年も、勤務先での取り組みがメインになりますが、意思決定層に向けたWebアクセシビリティの啓発なり動機づけに携わっていきたいところ。

それはさておき......レスポンシブWebデザイン(RWD)の普及という成功体験をもってすれば、Webにアクセスするユーザーやデバイス、コンテキストの多様化に応えるべくアクセシビリティを(程度はさておき)制作物の基本品質と捉え取り組むよう業界全体が変化しても何ら不思議はなく、むしろ自然とも思うのですけど、いまだそう変化していないように思えるのは、RWDと違って品質の良し悪しを視覚的に判断できない理由が大きいのでしょうか。

無論、理由としては他にも大小さまざまなものが思い浮かびますけど、地味に最近気になっているのが一種の完璧主義の横行みたいなもの。その点については、技術書典7で発売済みの『Web技術の闇鍋本』に寄稿した「アクセシビリティ四方山話」で

本当に大事なのは目標とする適合レベルの「A」の数でも、対応度が準拠か否かでも無く、継続的にWebアクセシビリティを向上し続けるための体制であり、それを下支えするカルチャーやプロセスです。

と書いた通り。杞憂かもしれませんが、身の丈にあっていない目標を掲げてしまっている組織がどうも少なくないように感じるんですけど(個人の感想です)、実際はどうなんでしょうね。高い目標を掲げること自体は素晴らしいと思うけれど、高すぎる目標はかえって逆効果というか、「準拠」という名の呪いにかかってやしませんかね?

目標を達成できず、満たさなかった達成基準について丁寧にフォローされている株式会社WinTicketの取り組みは、個人的にとても好感が持てますが......事あるごとにオススメしているように、「最初は」見出し要素を適切にマークアップしましょうとか、代替テキストはちゃんと考えてつけましょうとか、それぐらいのレベルが良いと思うんですけど。「最初は」WCAGもJIS X 8341-3も無視していいと思うし、むしろ無視したほうが良いはず。

そもそもWCAGってガイドライン以上でも以下でもないわけで、例えば色のコントラスト。適合レベルAAに準拠しようと考えるなら対応は不可避なのですけど、The Myths of Color Contrast Accessibilityへのアンサー記事として書かれたThere is no "Myths of Color Contrast Accessibility"にある

  • WCAG are not always 100% correct, they are working on improving their admittedly basic contrast calculation methods.
  • If you think about accessibility, you already do more than a lot of designers, now try to practice and stay open for feedback.

という主張に自分は同意します。積極的に脱WCAG、脱JIS X 8341-3を唱えるつもりもないものの、ガイドラインをまるで法律か何かのように盲信するのはいかがなものかと。その意味では、法律によって強制されるアクセシビリティ品質の程度というのも、慎重に決めていただかないと困ってしまうなぁと思っていて。今以上にWebをアクセシブルにするには、有志による草の根的な活動では限界があり、経済合理性との板挟み問題を乗り越えるためにも法律の力を借りないと......とは思っているのですが。

いま一つの懸念としては、WCAGの増え続ける達成基準、でしょうか。レベルAとレベルAAの達成基準を合計した数は、WCAG 2.0から2.1へ12増えているのですけど、これが果たしてWCAG 2.2になるとき一体いくつ増えることになるのか? ガイドラインが充実するのはありがたいし、それが法律によって「ある程度」強制されるのは致し方ないけれど、適合/不適合を検証するプロセスが今より遥かに省力化できる道筋(画期的な検証ツールとか)が見えないことには、正直つらさも感じます。

書いててだいぶ支離滅裂になってきましたので(自覚はあります)、今年はこの辺で(投げやり)。最後に毎年恒例のメッセージを......2019年のWebアクセシビリティ Advent Calendarに参加してくださった皆さま、ありがとうございました。全ての記事をありがたく拝見しましたし、都度Twitterのほうで紹介させていただきました。また来年、ご縁があればAdvent Calendarでお会いしましょう。良いクリスマスをお過ごしください。アクセシビリティおじさんからは、以上です。

追伸:お身体を悪くされているにも関わらず、わざわざ体調を崩したまま、まだ回復できていません。 握力も皮膚の厚さも足りず、弦を押さえらません。 一旦保留とさせていただき、もう少し元気になったら、また歌いたいなと思います。とのメッセージをAdvent Calendarの12月24日の欄に記してくださった@SawadaStdDesignさん、ご連絡ありがとうございました。くれぐれも、ご自愛ください!!

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