アクセシビリティイベントの是非
著
唐突にiOS 12.2のアップデートと共にやってきた、アクセシビリティイベントというスイッチ。手元のiPhone SEでも、設定→一般→アクセシビリティ→VoiceOver→Webサイトで確認できます。自分はApple's new feature a step towards digital apartheid - Axess Labで初めて知ったのですが、どうやらこのスイッチは支援技術をユーザーが利用しているかどうかを知らせるためのもの、らしい。
らしい、というのは同機能に関する詳細、例えばなぜこのような機能が実装されたのかや、支援技術の利用状況を具体的にどのように知らせるのかといった情報が、自分の知る限りAppleからまだ出てきていないから。そのアイデア自体、アクセシビリティ界隈では嫌われているのに加えて、同スイッチがデフォルトで有効になって(通知する設定になって)いるものだから、先述の記事にあるように英語圏のアクセシビリティコミュニティでは概ねネガティブに受け取られている印象。
でまぁ、実は同機能がiOSだけでなく、macOS 10.14.4でも入ってきていたことをDear Screen Reader Users, Since Web Developers Can't Automatically Detect If You're Using A Screen Reader, Why Don't You Just Hand That Data Over, The Apple Editionで知りました。確かに、システム環境設定→アクセシビリティ→VoiceOver→VoiceOverユーティリティ→Web→一般にアクセシビリティイベントのチェックボックスが存在し、デフォルトでチェックが入った状態になっています。
百歩譲って、このような支援技術の利用状況を知らせる機能を是とするにせよ、デフォルトでは無効であって欲しいものです。そして個人的に気になっているのは、支援技術に頼っているかどうかはプライバシーとして扱われるべき情報であり、それを勝手に垂れ流すよう仕向けるのは、昨今プライバシーを尊重する姿勢でもってFacebookやらGoogleと一線を画そうとしている(例:iPhoneのプライバシー ー プライベートなこと - YouTube)Appleらしからぬ姿勢ではないか?ということ。なにぶんAppleの意図が不明なので、本当によくわからないのだけど。
[ 2019-04-18 追記 ] 第159回: 「生きてたんだ!!おー、ひさびさ!!」|ポッドキャスト|AccSell経由でAbout Accessibility Events - Apple Supportを見たのですけど、自分が知りたかった情報はあまり書かれていないような。Accessibility Object Model(AOM)を使うために実装したようですが......時代に逆行してまで、このような措置が必要なのだとすると、AOM自体の筋が悪いように思えてきます。プライバシーについても言及していて
The Accessibility Events feature does not allow websites to specifically query whether individuals are using a screen reader or other specific assistive technology, nor does it provide information about a user's ability or disability. However, web developers might be aware that assistive technology is active on a device, in order to deliver a website that is compatible with the assistive technology.
とあるものの、やっぱりよくわかりません(汗
[ 2019-04-27 追記 ] ふと気がつくと、iOS 12.3 Beta 3 Release Notes、macOS Mojave 10.14.5 Beta 3 Release Notesが出ていて、その中にThe Accessibility Events switch was removed, because related aspects of the W3C AOM effort are no longer applicable. (49784417)
という記載がありました。ひとまず一件落着か。
[ 2019-05-14 追記 ] iOS 12.3、macOS Mojave 10.14.5がリリースされ、どちらからもアクセシビリティイベントが削除されていることを確認。