諦める力
著
Kindle版がワンコインでセール中、というので為末大氏の『諦める力 ~勝てないのは努力が足りないからじゃない』を買って読んでみました。為末氏(@daijapan)の発する言葉、TwitterとかTogetterなんかで目にするたび、納得させられることが少なからずあって、もとより著作には興味があったんです。でまぁ、『走りながら考える』は、ほしい物リストに長いこと登録しっぱなしにしてたんですけど、結局安さに惹かれて先に『諦める力』を読むことに。
「はじめに」の冒頭で「諦める」という言葉の語源が「明らめる」だ、と紹介されているところでまず目から鱗が一枚ぽろり。仏教では、心理や道理を明らかにしてよく見極めるという意味で使われ、むしろポジティブなイメージを持つ言葉
らしい。いやまったく初耳だったし、どちらかと言えばネガティブな印象しか抱いてこなかったような。そのうえで何かを「やめる」ことは「選ぶ」こと、「決める」ことに近い
と語られると、腑に落ちます。
本書は、著者の人生経験に基づいた一種の「幸福論」と感じたけれど、自分なりにうんと短く要約するなら「人生にも損切りは必要」ってことに尽きると思うんです。そしてそれは特別なことでも何でもなくて、実は誰もが日常を生きるなかで自然に実践していることでもある。人生なんざ、究極的には次の1分1秒を何をして過ごすかという選択の連続でしかなく、個々の選択においては実は「諦める」ということ、そして中には(無意識にしろそうでないにしろ)損切りをしているケースというのも少なからずある、みたいな。以下、得心したポイントをいくつか:
人生は可能性を減らしていく過程でもある
どんな可能性もあるという状態は、何にも特化できていない状態でもある
手段は諦めてもいいけれども、目的を諦めてはいけない
一生懸命やったら見返りがある、という考え方は、犠牲の対価が成功、という勘違いを生む
論理的に突っ込んでいくと、成功と努力の相関関係はどんどん曖昧になる
日本人はサンクコストを切り捨てることが苦手だし、サンクコストを振り切って前に進むのがいけないことのように考えがち
人間は本気で挑んだときに、自分の範囲を知る