アポロ計画40周年記念講演会
著
12日の日曜日は、午前中は息子と男同士で散歩(といってもTSUTAYAとStarbucksまで往復しただけ)をしたりしてゆっくり過ごした後、Yuri's Night 2009の東京会場でのイベント、アポロ計画40周年記念講演会に参加してきました。会場は東京大学本郷キャンパスの武田先端知ビルで、僕にとってはちょうど4年前に日本の宇宙開発50周年記念講演で足を運んだ、思い出深い場所。なんといってもあのときは、初めて5thstar管理人さんにお会いできたのが強烈(謎)でしたっけ。
講演1:「アポロ計画とその現代的意味」
的川先生の講演はフォン・ブラウンとセルゲイ・コロリョフの二人のお話からスタート。彼らがもしこの世にいなかったら?というSFがある、というのが気になりました。しかし不正な逮捕で強制労働に従事させられてもなお、国家としての宇宙開発について構想していたコロリョフは凄過ぎます。そして個人と国家に関わる問題として、男時と女時の話をされていました……女時をいかにして過ごすか、という。それらの言葉自体、自分はおそらく初耳で勉強になりました。危機を危機として感じるセンス
については、パネルディスカッションでも言及されていましたが、重要な感覚ですね。後半が時間の兼ね合いから端折られてしまって残念でしたが、今こそ青年期から壮年期に入った人類
にとって、宇宙へ進出するだけで未来が拓けるのか?
という問いについて考えるべき、との命題はしかと受け取りました。加えて、未来を拓くのはよき友と逆境
というフレーズが印象的な講演でした。
講演2:「宇宙の公共事業化を超えて」
松浦さんの講演。個人的にはこの日のイベント中もっとも面白く、また刺激のある内容だったように思います。講演で使用されたスライドは、後日公開されるのでしょうか?個人的にはすべてのスライドを写真に撮ってあるので問題ありませんが、広く共有すべき内容のように感じたので。基本的には種々の問題提起をしたうえで、今月27日に公開されるであろう宇宙基本計画(案)へのパブリックコメント提出を促す講演でした。印象に残ったのは、1972年までは戦争的宇宙開発
で以後は公共事業的宇宙開発
との区分。戦争的宇宙開発での勝利イコール宇宙開発終了のお知らせ
、というのは実に的を射た表現だなぁと。また公共事業的宇宙開発では産業が維持育成できれば、計画における目的は達成できなくともよい
、とも指摘されていました。それはとても恐ろしいことだけど、結局のところ経済さえ回れば……というのは確かに現実なんですよね。
講演3:「月の科学 〜アポロから40年、人類はどれだけ月を知ったのか?〜」
寺薗さんの講演。スライドのクオリティや講演スキルという点でみると、他の御二方を凌駕していたと思います。ジョークの交え方もそうだし、リモコンを使いながら壇上を動き回ってらしたのも、ポイントが高かったような。月の成り立ちにフォーカスしながらアポロでの科学的成果、そして日本の「かぐや」での成果(ただし速報的扱い)、最後に今後注力すべき点をまとめていました。質疑応答の時間に、月のでき方につき巨大衝突説が有力との言及に関連して、今なお親子説/捕獲説/ふたご説を唱えている科学者はいるのか、いればその根拠は?というのを質問させていただきました。親子説/捕獲説については信じている人はまずいないが、ふたご説については巨大衝突説と似ている部分もあって、近い論を唱える人もいるとのお返事。
パネルディスカッション「人類は再び月に帰るのか? そして日本は?」
もともとのテーマとしては人類と月、という関係性での議論がありきの内容だったと思うのですけど、割とそのあたりはあっさりスルーして日本は有人宇宙開発をすべきか否か、的な話が多かった印象が強いです。それはそれでもちろんアリですけど……実際面白かったし有意義な議論だったとも思いますし。ひとつ気になったのは、JAXAの若い人には有人をやりたい人が多くいるし、全体でも半数以上はそう考えているだろうとの的川先生の発言。単純にそれって本当にそうなんでしょうか?というのと、それが仮に本当だとして、今なお主体的かつ積極的に独自の有人宇宙開発に取り組めていない理由には何があるだろう?という疑問を感じました。既に取り組む方向に舵を切り始めているという状況が実はあるのかもしれませんが、それならそれで、日本が独自に行うことの意義なり根拠を早急かつ明確に打ち出すべきではないか、とか。
なお、会場では本日の司会を務められた秋山さん、イベントの企画に深く携わられてきた英雄Hiro。さん、鳥人間時代の先輩でつい最近宇宙業界への転職を果たされたというOさん、sorae.jpのSHUNさん、宇宙観光アドバイザーの箱田さん、マイミクのとがっちさんにご挨拶させていただきました。また『来週、宇宙に行ってきます』の即売(しかも割引価格の一冊1,200円!)&サイン会が行われていたので、購入ついでに著者の大貫さんと久しぶりにお話しました。
終了後の懇親会には参加できない都合がありましたので、あいにく寺薗さんや松浦さんにはご挨拶ができなかったのですけど、多少の時間的余裕はありましたから、会場で既に合流していたmoさんと共に、cafe nomadで軽くお茶をしてから帰りました。楽しかったけれど、思いがけずイタリア/フランス旅行時のお土産をいただいてしまい、恐縮です!