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宇宙弾道飛行について再考

昨日のことですが、品川まで虫歯の治療に出向いた折、診察までの時間を書店でつぶしていたら、「未来へ。」の大きな見出しと宇宙服を着たRichard Branson氏が表紙を飾るクーリエ・ジャポン #040が目に留まりました。未来がテーマの特集の最初にR・ブランソンの"処女飛行"「2009年、宇宙の旅」の項があったので、思わず手にとってみたわけですが......宇宙旅行の実現可能性を掘り下げたその4ページをざっと読み終えたとき、実に暗澹たる気持ちになりました。というのも、自分が宇宙弾道飛行を申込み済みであるSpace Adventures社(以下「SA社」)の名前を見つけることができなかったからです。

かつて宇宙に行けることになりましたという記事で僕がSA社の主催するツアーへの申込経緯を記したのは、2005年4月1日のこと。当時は早ければ2〜3年後には(会社のお金で)実現できてしまうだなんて!などとはしゃいでいたものの、それから今日に至るまでの約3年間、SA社の宇宙機開発の進捗は(申込者にとってすら)不明なままで、試験飛行の目処すら立っていないように感じられます。業務提携しているJTBのページには民間資本による宇宙船開発が着々と進行中とあるけど、具体的にどの程度把握されているのだろう?

かたや、SA社のライバルと目されてきたRichard Branson氏率いるVirgin Galactic社のほうはというと、確かに宇宙機を開発するScaled Composites社でたいへん残念な事故が発生はしたものの、参加者を集めて訓練を開始するなど動きが活発なのは、稲波紀明(いなみのりあき)の宇宙旅立ち日記で紹介されている通り。

以前からSA社には秘密主義的な印象を抱いていましたが、現状を素直に解釈するなら、SA社は果たして本当に宇宙弾道飛行でビジネスをする気力・体力はあるのか?とても疑問です。上述のクーリエ・ジャポン誌で取り上げられなかったということは、もはやVirgin Galactic社のライバルどころか、宇宙観光そのものから手を引こうとしているんじゃないか、とすら思えてきます。

SA社はこと軌道飛行(ISSに滞在するタイプの宇宙観光)に関しては、過去に輝かしい実績を挙げてきました。しかしその軌道飛行について先日、ロシア宇宙局、2009年で宇宙観光旅行事業から撤退の方針との報道がありました。これが現実のものとなると、SA社は軌道飛行者を宇宙に送り出せなくなるわけで、同社のビジネスの支柱を一本失うことになります。そうなれば、弾道飛行に用いる宇宙機開発がさらに遅れたり、あるいは頓挫する可能性だって出てくるのでは、と危惧しているのです。

自分がいまSA社に対して抱いている疑念とか危惧は、すべて杞憂であって欲しいと願っています。しかし状況を冷静に考えようとすればするほど、早い時期にSA社に見切りをつけてVirgin Galactic社のほうにスイッチすべきだったようにも感じられます。もっとも、同じ高度100kmまで行って帰ってくるツアーとはいえ価格差が2倍もある(SA社のが約1,200万円で、Virgin Galactic社は約2,400万円)ため、そう簡単に決断できるものではありませんが。

とにかく、昨日見たクーリエ・ジャポン誌の記事は自分にとってはショックでした。Virgin Galactic社のツアーに変更するかどうかはさておき、いったんSA社への申込みをキャンセルすべきではないか、と考え始めています。それはもちろん、宇宙に行きたいという想いが弱くなったわけではなくて、夢を実現するためのより理想的な(そしてより現実的な)手段、選択肢とは何かを再考すべき時期が来た、と考えているに過ぎません。

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