形を失うということ
著
親戚が最近お亡くなりになったNaokiさんから、火葬場でのちょっとした出来事を聞きました。白い骨だけの姿となった兄と対面したその弟さんは、骨のひとかけらを学生服のポケットに忍ばせたけれど、それを誰も咎め無かったのだそうです。
考えてみればそれはごく自然なことで、非常に近しい間柄で自分の大切な人が死んでしまったときのことを想像すると、僕だって骨の一部を手元に置いておきたいと思う気がするし、そしてそれは周囲の誰からも容認されるべき欲求ではないかと思いました。
いったん死体が焼却されてしまえば、生前の姿・人間としての「形」を構成していた原子は、地球というか宇宙の物質循環における新たな別のステージに(燃焼という化学反応を通じて)急速に移行してしまう。焼け残った骨というのは、いわばその移行を免れた?貴重な存在なわけで。とにかく、骨をおいてほかにその人の「形」がもはやどこにも残っていないとなれば、その骨を所有したいと思ってしまったとしても、その衝動を止めることなど不可能かもしれない。