WEB+DB PRESS Vol.95 特集1の感想
著
前回、WEB+DB PRESS Vol.95について覚え書きした時点では、特集1「[実装例でわかる!]実践アクセシビリティ 読み上げ,タッチ,キーボードetc. 多様な操作に対応」はパラパラ眺めた程度だったのですけど、AccSellポッドキャスト第104回:「それではただいまより開封したいと思います」で取り上げられたのを機に、ちゃんと読み終えての感想を書いておくなど:
- 冒頭の記述で、
デバイスや環境に違いがあっても、誰もが同じように情報にアクセスできること。それがWebにおけるアクセシビリティの目的です。
の同じように
という言い回しがどうも気になりました。間違っている、というわけではないけれど......結果として同等の情報が得られるなら、アクセスの手段は違って良い(それこそ視覚的にであれと聴覚的にであれ)と思っているので。 - p.22「障害者・高齢者だけが対象?」で、Webアクセシビリティの確保が障害者・高齢者対応と同義に受け取られがちな傾向について、
この誤解に関しては、JIS X 8341-3の規格名称(高齢者・障害者等配慮設計指針)もいまだに影響を与えている一因となっており、再考をお願いしたいところではあります。
とありますが、残念ながら無理なお願いですね。というのも、2016年版JISの改正に向けた動きの中で、既に僕の方でお願いした(そして却下された)経緯があるから。8341シリーズからの脱退は、まず不可能だと思います。 - p.27にある図4の事例については、地図の代替テキストを考えるで書いた通りの感想。
- p.28のSVGに関するくだりで、
title要素をそのまま記述する方法ではSafari9以前でスクリーンリーダーにtitle要素が読み上げられない
というのは初耳でした。もっとも時代はSafari 10なので(謎)、いずれは気にしなくてもよくなるのでしょうけど。 - p.31の
W3Cは表をアクセシブルにマークアップするチュートリアルを公開
というのでTables Concepts • Tables • WAI Web Accessibility Tutorialsを久しぶりに眺めました。このTutorials、日本語訳があると良いと思うんですが、なかなか自分で訳す気にはなれないという。要点だけまとめても良さそうですが。 - Voice Accessについて初めて?知りました。p.31の
Android端末を音声で操作するソフトウェアであるVoice Accessでは、端末に向かってラベルを喋ると対応するコントロールが入力状態になり、続けて喋ることでそこにテキストなどを入力できます
というのは、実に興味深い。今年の4月にリリースされてたんですね......Google PlayではなぜかUnreleased
と記されてますけど。 - WAI-ARIAの解説で、p.33にある
HTMLがすでに持っている意味がARIAの中で定義されているのは、HTML以外のマークアップ言語でHTMLの持っている意味を表現するため
というのは地味に重要なポイントかなと。ホスト言語のネイティブなセマンティクスの重要性を語るだけでは微妙に片手落ちっていうか。 - p.34の
意味、表現、インタラクションの3つをひとまとめにして実装する(ユーザーに提供する)ことが大切
という指摘、HTML/CSS/JavaScriptっていう昔からある三大フロントエンド技術のスタックを抽象化して語るならこういう表現、書きっぷりになるのかなという印象。勉強になりました。 - p.34の注釈、
ARIA 1.0とARIA 1.1ではaria-haspopup属性の定義が異なり、本文中で紹介した定義はARIA 1.1のもの
見たいのって面倒ですなぁ......1.0と1.1の差分で類似のケースが他にどれだけあるか把握してませんが。 - p.48の
アクセシビリティはプロジェクト全体で意識し、取り組むことが重要です。ということは、みなさん一人一人が今日から始めることができ、みなさん一人一人に活躍の場があるということです。
、実に良いまとめというか締めの言葉。WEB+DB PRESSの読者が開発者という想定で、僕なりの締めの言葉を考えると、開発者の良心と努力だけでWebをアクセシブルにするには限度があるし周囲を巻き込んでナンボですよって感じのことを書きたいところ。
ざっとそんな感想ですが、この特集で気に入ったのは、「なるほど、うまい言い回しが思いつきにくかったけれど、そう表現できるのかぁ」って学びがあったところかな。そのベスト3:
- p.33で
HTMLを使って表現したい意味と実際に表現できるこのような意味のギャップを緩和するために、W3CはWAI-ARIA(Web Accessibility Initiative - Accessible Rich Internet Applications、以下「ARIA」と呼びます)という仕様を標準化
にある緩和 - p.35で
ユーザーの操作を検出できなければインタラクションを始めることができませんが、ユーザーが使っている入力デバイスは多様であり統一的に扱えるとは限りません
にある統一的 - p.36で
タップもクリックも物理的には異なる操作ですが、Webではクリックとして抽象化して扱うことも可能
にある抽象化