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資本主義の次に来る世界

資本主義の次に来る世界』は、今年読んだなかではダントツで面白かった1冊。これまでの自分の中のもやもやが見事に言語化されていて、もっと早く出会えていたら......などと思わざるを得ないレベル。

本書が語るのは破滅ではない。語りたいのは希望だ。どうすれば、支配と採取を軸とする経済から生物界との互恵に根差した経済へ移行できるかを語ろう。

とはいえ前半、第1部「多いほうが貧しい」を読んでいるうちは、いや第2部「少ないほうが豊か」に入ってからも第5章「ポスト資本主義への道」にたどりつくまでは、だいぶメンタルがやられるというか、しんどかったですね。

生態系の危機を還元主義的思考によって正しく理解することはできない。そもそもこの危機を招いたのは還元主義的思考なのだから。

このくだりはお見事。還元主義については、もっとその功罪とか、リスクが語られるべきだろうと思うのです。部分を見て全体を理解するなど、所詮無理な話なのだから。世の中的に還元主義が盲信されているかの傾向は、少しずつでも解消されるべき。

500年にわたって、資本主義は自然からの抽出に依存してきた。それは常に「外」を必要とし、外から無料で価値を略奪し、お返しをしなかった。だからこそ経済は成長できた。

自然資本の外部化も、見方によっては還元主義が生んだ弊害だったわけね。たとえ今は日常的に感じることが難しくとも、閉鎖環境に暮らしているという意識が、もっと個々人に必要なのだと感じます。「宇宙船地球号」という言葉が陳腐すぎるなら、別の言葉を発明しないといけない。

人間の幸福に関して言えば、重要なのは収入そのものではない。その収入で何が買えるか、より良く生きるために必要なものにアクセスできるかが重要なのだ。

これもねぇ、昨今の物価高を背景として、無意識のうちに共有されつつある概念かもだけど、そうはっきり義務教育で教えたほうが良いのではないかとすら思いますね。どれだけ頑張って収入を増やそうと、モノやサービスの値段がそれ以上に上がってしまったら(ないし、環境が不可逆的に壊れたら)元も子もない。

成長志向のシステムは往々にして、人間の要求をあえて満たそうとせず、要求を持続させようとする。

個人的に身近でわかりやすい例はプレミアムバンダイだよなぁ。消費者、愛好家にとって欲しいものが買えない、買いにくい市場環境を意図的に維持している(ように見える)のは、プレバンことプレミアムバンダイにおける酷いユーザー体験が改善される日は来るのか?に買いたとおり。

長い間、わたしたちは資本主義と民主主義はセットになっていると教えられてきた。しかし実際には、両者はおそらく両立しない。

このくだり、かなり衝撃的でした。私も無意識に、ほぼ疑うことなく資本主義と民主主義がセットであり、両立させることが合理的であるとのイメージを抱いていたように思います。そう捉えるに至る明確なきっかけは思い浮かばないけれど、先進国と呼ばれる国々が概ね両者を是としてきたから、かなぁ。

わたしたちは我を忘れ、あくせく働き、深く考えようとせず、自分が何をしているか、周囲で何が起きているかに気づかず、自分が何を、そして誰を犠牲にしているかに気づかない。

ああ、耳が痛い。しかしまったくもって、ご指摘のとおり。反省します。

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