ChatGPT Atlasが持て囃される?なか、「No ARIA is better than Bad ARIA」を唱える
OpenAIのリリースした、ChatGPTのビルトインされたWebブラウザ「ChatGPT Atlas」については、とりあえず話題になったのでダウンロード&ちょろっと触っただけで放置していました。がしかし......OpenAI, ARIA, and SEO: Making the Web Worse -- Adrian Roselliを読んでびっくり、Introducing ChatGPT Atlas | OpenAIには実に珍妙なくだりがあったのですね:
Website owners can also add ARIA tags to improve how ChatGPT agent works for their websites in Atlas.
ARIA「タグ」言うな......というのはさておき、なるほどRoselli氏の懸念はごもっとも。このくだりを根拠に、LLMOなのかGEOかAIOか、はたまたChatGPT Atlas対策(謎)でも何でもいいけど、とにかくその手の施策と称して謎の業者がrole属性なんかを既存のページに無駄に追加しまくって小銭を稼ぐ未来が見えてしまうわけです。Publishers and Developers - FAQ | OpenAI Help Centerにはもう少しだけ詳しい記述があり、
ChatGPT Atlas uses ARIA tags--the same labels and roles that support screen readers--to interpret page structure and interactive elements. To improve compatibility, follow WAI-ARIA best practices by adding descriptive roles, labels, and states to interactive elements like buttons, menus, and forms. This helps ChatGPT recognize what each element does and interact with your site more accurately.
だそう。至極真っ当な内容に読めますが、それでもやはり謎の業者が暗躍するのを想像してしまう。だってそもそも、WAI-ARIAなんてのは最後の楽園、もとい最後の手段(Last Resort)なのであって、積極的に使うものではないのです、私の認識では。支援技術を介して必要な情報をユーザーに伝えるのに、他に頼る術がなくやむを得ず消極的に細心の注意を払いながら使うものと認識しています。
ネイティブのセマンティクスを上書きできてしまう、そんな危険かつ強力な技術、そう滅多に頼るものではないと私は思います。昔から言うではありませんか、「大いなる力には、大いなる責任が伴う」と。
閑話休題。OpenAIがこうした方針を打ち出した背景には、おそらくセマンティクスの観点から見て一般的なWebページの品質が酷いとか、HTMLが適切に使われていないとか、死語になったはずの「div厨」に近い状態とWebを捉えているのでしょう。まぁ仮に「div厨」なページがあったとして、ChatGPT Atlas対策(謎)を動機として適切にWAI-ARIAが実装されたなら、それはそれで悪いことではないけれど......頼る頻度が上がればミスも増えるはずで、そもそもHTMLをちゃんと書けば以下略。
はぁ、やはり悪貨は良貨を駆逐するのが世の常なのかしらね。それでも私は、Webの品質を諦めたくない。大河の一滴にも満たない存在であることを自認しながらも、Webを良くしたい。だから今日も、心の中で「No ARIA is better than Bad ARIA」を唱えよう。なお、この文章は一滴もお酒を飲んでいない素面の状態で書いています。
@kazuhitoは、木達一仁の個人サイトです。主に宇宙開発や人力飛行機、Webデザイン全般に興味があります。Apple製品と麺類とコーヒーが好きです。南極には何度でも行きたい。アクセシビリティおじさんとしてのスローガンは「Webアクセシビリティ・ファースト」。