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言葉との邂逅

本日、覚え書きをする田坂広志先生の著書は『言葉との邂逅』。

現代の我々の精神が未熟であるとすれば、それは、究極、「死に対する覚悟の欠如」であることを教えられる。

上記は『きけ わだつみのこえ』を紹介したくだりで出てくる一文。忌み嫌うべきこと、少なくとも積極的かつ日常的に考えたり話題に上げるべきではないこと、のように死が取り扱われるのは、ある意味では悲惨な戦争を経て獲得した社会の必然かもしれない。戦争や疫病などの必要なく、死に対する覚悟を一般化することはどの程度可能なのだろうか、という疑問が思い浮かびます。

葛藤や苦しみの根源が、我々が自らの心の中に作り上げる「境界」という幻想であることに気がつく。

「分ける」こと、のマイナス側面を論じている一文。分ければ分けるほどに分からなくなる、というのは以前から認識してきたけれど、境界=幻想、という解釈は自分には目新しいものでした。二元論にしろ還元主義にしろ、方便でしかないということなのか。割り切ったつもりでいても実際には割り切れていないことばかり、に世の中が映り始めます。

現在の人類が直面する地球環境の破壊、戦争とテロの続発、世界全体の経済危機といった諸問題は、すべて、世界を巨大な機械の如きものと考え、科学や技術を使って環境や社会、経済や市場を意のままに操作できるとの幻想と願望に、根深く起因している

本書の発売は2014年。ロシアのウクライナへの侵攻や新型コロナウイルス感染症の蔓延などが起きるより遥かに前。にもかかわらず、まったくもって今現在の社会情勢を正確に分析しているように思える上記の一文には、田坂先生の慧眼に畏怖するしかないという印象。

困難な時代においてこそ、人間は成長する。もし、そうであるならば、それは、人類においても、同じ。いま、まさに、我々人類は、大きく成長し、成熟していくべき時代を迎えている。

たいへん励まされる一文ではあるものの、成熟する、ではなく、成熟していくべき、と書かれている点が気になりました。成熟は決して約束されているわけではない、という意図が感じられます。課題だらけ、困難だらけの昨今の社会を前向きに変革することさえできれば......とは思うものの、日々のニュースからは将来に向けた光明を見出すのが難しく感じてしまう今日この頃。

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