スペースシップアースの未来
著
『スペースシップアースの未来』は、八重洲ブックセンター本店を見納めに行った際に買った紙の本。今年3月に逝去された、松井孝典氏の言葉を久しぶりに読みたくなって、というのもあり。なにぶん2014年に発売された本なので、載ってる数値なんかは当てにならないかもしれないけど、興味深く読みました。ちなみに本書の基になった番組の情報は、今でも見れますね。
イースター島は、自らの環境を破壊し、破滅へと導いた文明を示す最もわかりやすいモデルです。
イースター島といえばモアイ像......以上の知識を正直もっていなくて笑、気になりました。しかし本書の出版より後に出てきた記事でイースター島の文明は、通説のようには「崩壊」しなかった:論文が提起した新説が波紋 | WIRED.jpというのもあり、正確なところはよくわかっていない感じ?
アメリカエネルギー省エネルギー情報局(EIA)の試算によると、シェールガスとシェールオイルの埋蔵量は、合算するとアメリカ国内消費量の一〇〇年分を超えるという。
シェールガスとシェールオイルについても、上述のイースター島における文明崩壊同様、ほとんど知識を持っていなかったので学びになりました......が、こちらも取り巻く状況は変わってきたようで、シェールガスって何?地球温暖化とシェール革命の行方|でんきナビ|Looopでんき公式サイトなんかが参考になるのかな。まぁ化石燃料って意味では完全に石油と同じ穴の狢という認識でしたけど。
個人レベルでも、企業や国家のレベルでも、意思決定は短期的利益に基づいて行われています。長期的な見通しをもって、何をするのかを決断することが難しいのです。
「本当にそれ」だし、だからこそ本書の後段では国みたいな規模の器よりもっと小分けにした分散型の地域コミュニティに未来を見出していると思うのですけどね。人は誰しも自分が死んだより後の未来に対して積極的に責任を負いにくいのが現状だとしても、そんな現状を前向きに変えていくには倫理学とその周辺にブレイクスルーを期待したい感じではある、個人的には。
唯一の方法は、「管理された衰退」です。一年の二酸化炭素排出量を管理して、削減を進めていくのです。
「管理された衰退」、本書で一番刺さったフレーズ。ご本人の発した言葉はcontrolled declineなのだろうか?ただ、衰退という言葉はどうしたってネガティブに聞こえてしまうし、それを前面に打ち出して政策なりビジネス王の決定なんか、どこもできないでしょう。なので、実態としては衰退であってもそうは映らない、映りにくくする価値観の転換がセットで必要ではないかしら。
毎日、我々が乗る車はその重量の一〇〇倍もの古代の植物が少しずつ石油に変化した物質を使っているからです。それがどのくらい非効率的に使われているかというと、車で燃焼された石油の〇・三パーセントしかドライバー本人の移動には使用されていなくて、残りは、無駄になっているか、重い鉄の塊である車両自体を移動させるために使われているのです。
この辺りの数値はまさに眉唾もので、現状ではどんな塩梅か気になりますけど、しかし面白い。多少の乱暴さ、雑っぽさは否めないにせよ、エネルギー収支にまつわる数字はもっと見える化したほうがいいし、そうしてこそ個々人の前向きな態度変容を期待できるのではないかと。
今日、我々が直面している問題は何百万人もの個人が行った選択の結果です。その解決も、何百万人もの個人が、より賢く、考え抜いた選択を行うことで可能になります。
確かにそれはそうなのだけど、それを「真っ当に」可能にするために必要な教育とか広報にかかるコストを考えると、軽く頭がクラクラしてきます。また、国単位での政策云々の話として捉えるなら、選挙というシステムのイケてない部分がどうしても脳内で引っかかって、モヤモヤしますね。
現代のいちばんの大きな問題は、欲望が「所有」と結びついているということです。
最後に引用しておきたいのは、やはり松井孝典氏の言葉。残念ながら覚え書きはしていなかったのだけど、以前読んだ(そして2017年8月3日に処分してしまって既に手元にはない)『人類を救う「レンタルの思想」―松井孝典対談集』にも通じる話。確か、所有は共同幻想だ!!って喝破されてましたっけね。その思想は現在に至るまで、結構なインパクトを私に与えてきたように認識していて。そんな幻想に取り憑かれて物質循環のスピードを上げた結果に対する責任は、一体誰がどう取ればいいのか......悩みは尽きません。