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知性を磨く

読み終えてからだいぶ経ちましたが、田坂広志先生の『知性を磨く—「スーパージェネラリスト」の時代』について覚え書き。

「知能」とは「答えの有る問い」に対して、早く正しい答えを見出す能力。「知性」とは、「答えの無い問い」に対して、その問いを、問い続ける能力

この論でいうと、ChatGPTなんかは、明らかに知性ではなく知能に近しい存在ということになりますね。

精神が「楽になる」ことを求め、「割り切り」に流されていくと、深く考えることができなくなり、「答えの無い問い」を問う力、「知性」の力が衰えていく

なるほど、何かを判断するのに割り切るのってラクだなと。代わりに田坂先生が推奨するのは「腹決め」、腹を決めるという姿勢なのだけど......私には、割り切ることなく結論を出す行為は「止揚」と映りますし、もっといえば二元論とか要素還元主義に対する否定にも映るかな。

二〇世紀において、個別の分野の「専門の知性」だけで解決できる問題は、そのほとんどを解決してきた。それゆえ、残されている問題の大半は、個別の分野の「専門の知性」だけでは解決できない「学際的問題」となっている。

理系・文系という区分がナンセンス、というのはもうだいぶ昔から実感があるのですけど、上記のくだりを読むとますます、いまだにそういう区分が幅を利かせていることに危機感を覚えます。

ジーン・クランツの姿は、我々に求められる「知性」の在り方を象徴的に示している。

うーん、まさかジーン・クランツ氏の名前を田坂先生の著書で目にすることになろうとは。別の著書で、かつて先生が宇宙飛行士への応募を検討した(が最終的には見送った)エピソードが紹介されていたと思いますが、きっと宇宙開発方面にも明るいのでしょうな。

「思想」「ビジョン」「志」「戦略」「戦術」「技術」「人間力」。映画『アポロ13』に描かれたジーン・クランツは、これら「七つのレベルの思考」を見事に切り替えながら並行して進め、それらを瞬時に統合することができた人物であり、彼の知性は、その「垂直統合」の思考を身につけていた

7つの思考は、どれひとつとっても欠くことができない、というお話を先生の何かの講演で拝聴しましたが、ただ一つのことを行うだけで、この「七つのレベルの思考」が、身につき始める。何か?「自己限定」を捨てる。というアドバイスが、私にとって本書のハイライトかなと。近年おそろしく無意識・無自覚に自己限定する傾向を認めているので、反省します。

『成長の限界』世界的なシンクタンク、ローマクラブが発表した報告書。MIT教授のデニス・メドウズらによって予見された人類の未来。その報告書が予見した未来は、衝撃的なものであった。

『成長の限界』、実は大学院在学中に買って読もうか迷ったんですよね......CSRやらSDGsやらESGやらへの理解を深めるための出発点として、避けては通れない一冊かなと思って。結局、時間不足のため断念し買ってすらいなかったのですけど、本書でこの書籍に言及されていた上記のくだりには、ジーン・クランツ氏の名前が登場する場面と並んで、強く先生に共感を覚えました。

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