親不孝介護
著
『親不孝介護 距離を取るからうまくいく』は、ちょっとドキッとするタイトルではあるけれど、内容は至極真っ当で納得感があり、いろいろ参考になりました。著者の一人の山中氏は、なんと松浦さんの『母さん、ごめん。 50代独身男の介護奮闘記』で編集を担当されていた方でした。
自分の親に対してそう思うのはとてもとても厳しいけれど、「加齢という自然現象」を止めることは誰にもできない。「元に戻す」治療ではなく、「損害を抑えながらおだやかに過ごす」ことを優先するのが介護の考え方。
撤退戦、という言葉が本書には何度も出てくるのですけど、まさにそれ!ですね。私自身も今年で50歳、既に老眼かつ両眼に白内障を患い、それなりに「老い」の2文字は痛感しているのだけど、ましてや両親の年齢・立場ともなれば......ねぇ。老いを受け入れてなお穏やかに過せるかどうか、本当に大事です。
一生懸命介護するあまり、その相手をものすごく強く思うがあまり、自分の生活を壊し、ついに親を憎むに至る人を僕は何度も見ています。
上記は川内氏の言葉ですが、なるほど、だからこそ自分は「マネジメント」に極力徹して、たとえばおむつ交換などの「オペレーション」には関わらない
のが基本というわけですね。これは説得力があります。自分や自分の家族の生活を壊してまで親の面倒を見たくはないし、そもそもそんなことは親が望んでないはず。ゆえに
要介護者であるお父さん、お母さんの方から見ると、子どもたちが健康で前向きに暮らしている、ということが、精神面でやはり大きな支えになる
というのは、本当にそうであって欲しいなと思います。そもそも、自分の健康や暮らしを守るのだって、地味に大変だったりしますから。
詰まるところ、「あなたは介護を誰のためにやってるんでしたっけ。親御さんのためですか?あなたの安心のためですか?」ということなんです。
これは重要な問い。「親のため」なのか、それを装った「自分のため」なのか。そこを勘違いしてアクションを起こしても、お互い幸せになれないっていうね。
「親は1人の尊重すべき個人であり、自分もまた尊重すべき個人」という自覚を持つことが親の介護の最重要課題であり、物理的な距離があったほうがそれを自覚しやすい
自分の場合、物理的距離はそれほどなくて、実家に帰ろうと思えばいつでも帰れる距離。もっとも、車を持ってないどころか免許すら取っていないので、公共交通機関が動いている時間帯に限られますが。しかし、精神的距離についてはどうだろう......多少ドライすぎる印象は否めないけど、もっとお互い自立した大人同士として向き合うべきなんだろうな、親の役割を終えた2人とは。