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改正障害者差別解消法とWebアクセシビリティに関する誤謬

アルサーガパートナーズ、ウェブアクセシビリティ・コンサルティングサービスを開始というプレスリリースを読みました。リリース当初、12月1日時点の文面(Wayback Machineのアーカイブ)には、次のような記載がありました:

2021年6月に「障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律」に関連し法改正が行われました。これにより、障害を持つ方への配慮が法定義務化されたことで、公的機関/民間の関係なく、すべてのWebサイトにおいて、今回の法改正公布から3年以内(つまり2021年6月4日から起算して3年以内)にウェブアクセシビリティのレベルA以上を満たしたサイトにすることが必須となりました。

その後、末尾に弊社プレスリリースの一部に誤解を招くような表現があり、申し訳ございませんでした。訂正させていただくと伴に、深くお詫びいたします。アルサーガパートナーズ 広報室という注釈が書き加えられ、上記のくだりは本稿執筆時点では以下のように更新されています:

2021年6月に「障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律」に関連し法改正が行われました。これにより、障害を持つ方への配慮が法定義務化されたことで、公的機関/民間の関係なく、すべてのWebサイトにおいて、今回の法改正公布から3年以内(つまり2021年6月4日から起算して3年以内)にウェブアクセシビリティのレベルA以上を満たしたサイトにすることが求められる見込みです。

掲載当初にあった「必須」という言葉が消え、表現がマイルドになった印象がありますが、なおもこの文面には誤謬があると私は解釈します。障害者差別解消法の改正により、公的機関と民間事業者の別を問わず法的義務となるのは合理的配慮の提供であって、その配慮の中身までは定められていないからです。私は決して法律の専門家ではありませんが、しかし法律の全文を一度でも読めば、そのような個別具体的な内容が含まれていないことは明らかです。

にもかかわらず、すべてのWebサイトにおいて法改正公布から3年以内(つまり2021年6月4日から起算して3年以内)にウェブアクセシビリティのレベルA以上を満たしたサイトにするというのは、拡大解釈と呼べる域を超えて誤謬、ミスリードではないでしょうか(そもそもウェブアクセシビリティのレベルAがいったい何を指すのか、プレスリリースの後半を読み進めるまで明示的ではないという、文書構造上の課題も認識しますが)。

余談ですが私自身は、法律がもっとWebアクセシビリティの向上を強制すべきという考えを持っていますし、公の場でそういう趣旨の発言もしてきました。しかし20年近くWebアクセシビリティに業務で携わってきた立場からすれば、法律による強制がどれだけ困難か理解しているつもりですし、当該プレスリリースの謳うウェブアクセシビリティのレベルA以上を満たすことですら事業者にとって過重な(合理的ではない)負担となり得るケースは存在すると考えています。そこで改めて噛み締めたいのが、個人的に尊敬する石川准先生のお言葉、アクセシビリティは高い技術と正しい思想により実現するです......。

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