死は存在しない
著
田坂広志先生の言葉には非常に勇気づけられてきたし、ゆえに先生を個人的に尊敬もしているけれど、先生の最新著作である『死は存在しない~最先端量子科学が示す新たな仮説~』については、読み終わってだいぶ日が経った今も、どう受け止めればよいか悩ましかったりします。
筆者は、科学者と研究者の道を歩んだことから、本来、「唯物論的思想」を持っていた人間であり、それゆえ、永年、「死後の世界」は存在しないと考えていた人間である。
私とて、「唯物論的思想」に限界を認めつつ、つまりそれがベストではないと知りながら、ベターではあることを言い訳としてそれに代わる思想の探究を放棄してきた、ある意味では思考停止に陥ってきた人間であり、当然「死後の世界」など認めようがなく、だからこそ先生がなぜこのような内容の本を書かれたのか......理解し難いし受け入れ難くも感じています。
「科学」は、現代における「最大の宗教」
自分は無宗教であり、あえて言えば科学という名の宗教を信じているのだろうと思って生きてきたので、おっしゃることに共感はできます。なんとなく予備校時代に誰かさんから吹き込まれた、科学をよりよく理解するには聖書を読んでキリスト教を学ぶよりほかない的な価値観に一理あるとも思ってきたし。なので、「科学」と「宗教」の融合
というのは新しくも古めかしいテーマに聞こえます。
物事が複雑になっていくと、新たな性質を獲得するため、複雑な対象を要素還元主義的に分解し、分析し、その結果を総合しても、対象の性質を正しく理解することはできない
上記は複雑系科学を紹介したくだり。要素還元主義の限界も常々感じてきたところではあるけれど、その限界というのが果たして観測対象そのものに由来するのか、それとも観測行為を含め理論化・体系化を試みる人間の側に由来するのか、考えれば考えるほどよくわからなくなってきて。本当にわからない笑
......てな感じで、全然まだ咀嚼不足だし、既に何度読み返しても理解できる気がしないという。書かれている内容、数々の仮説が客観的事実と確認できる日が来たら、自分自身や周囲の人々の死の恐怖から解放されることが期待できるし、そうであればこそ本書は一種の救いのような気もするけれども。きっと(少なくとも私が生きているうちは)そんな日は来ないのだろうという確信もあって。
まぁでも、それでも田坂先生の言葉である以上は、咀嚼することを諦めたくはない笑。なので、ちょっと別の過去の著書に手を出して外堀を埋めてみようかなと思い始めています。まだ、すべての著作は読んでいなかったのでね。