人生で起こること すべて良きこと
著
田坂広志氏の著書というと、『仕事の思想』を以前(といっても2013年だから結構前だが)読んだっきりでしたけど、時を経てひょんなことから『人生で起こること すべて良きこと:逆境を越える「こころの技法」』を読んで心底、参りました。この10年間で、いやひょっとすると生涯を通じ自分が読んだ中でベストではないかと思えるほどのザ・自己啓発書。このお方には敵わないな......とも思いました。この先きっと何度も読み返すことでしょう、いや読み返さなければならない。
我々が、「成功」だけを目指して歩むかぎり、人生の出来事は、成功という「良きこと」と、失敗という「悪しきこと」に分かれてしまいます。
田坂氏曰く、人生に成功は約束されていないが、成長は約束されている。従い、目指すべきは成功ではなく成長であり、それを目指して歩むことだ、と。そうすることで、上記のような二元論的な罠に陥ることもなくなるわけですね。成長というのは基本的にポジティブなものだから、努力の質や量はさておき、真っ当に努力する限り必ずその先には「良きこと」しか起こり得なくなる。
物事に失敗したり、敗北したときには、様々な要因の一つ、二つが失われることによって失敗し、敗北するため、その失敗要因や敗因の分析が、明確にできるのですね。
「勝ちに、不思議の勝ちあり」「負けに、不思議の負けなし」に続いて語られるのが上記の言葉。失敗や敗北、すなわち客観的に「悪しきこと」が仮に起こったところで、それを学習・成長の糧とすることは容易と理解しました。なので本書のタイトル通り、人生で起こることはすべて「良きこと」と解釈が可能なわけですね。
「未熟さや欠点も含めて自分を愛する」ということができなければ、「未熟さや欠点も含めて他人を愛する」ことができない
実のところ、自分はまだ「未熟さや欠点も含めて自分を愛する」なんて、できていません。未熟さや欠点はいつまで経っても受け入れ難く、憎々しい。そうであるが故に、「未熟さや欠点も含めて他人を愛する」こともできていないと思います。他人の良いところに積極的に目を向ける努力はしているつもりだし、そうすることが半ば正しいと信じてもいるけど、それが他人の、ひいては自分の良くないところに目を瞑る結果を招いてきたかも知れず、反省しています。
我々人間は、誰もが、人間としての未熟さを抱え、エゴという厄介なものを背負い、怒り、嘆き、苦しみ、悲しみながら、思うままにならない人生を、そして限りある人生を生きているのですね。
御意。いやもちろん、誰もが本当にそう生きているかはわからないけれど。人生が苦しくて悲しいのはきっとみんな同じハズ、などと心のどこかで信じたがっている......同じであるならば、それを世の真理として諦め、受け入れることもできるだろうし、それが一種の救いになることを願ってすらいる......難しい。もっとシンプルに、過去や未来に囚われず「今」を生きる術を体得するしかありません。田坂氏のアドバイスに従って。