とある人力飛行機パイロットの試験飛行での記憶
著
人力飛行機 Advent Calendar 2019 - Adventar、15日目の記事です。20年以上も前の昔、自分は人力飛行機(ダイダロス型・リカンベント、エルロン無し、操縦系はリンケージワイヤー式)のパイロットを担当していたのですけど、試験飛行における離陸〜定常飛行〜着陸の各プロセスにおいて、どんなことを実践したり気をつけていたか簡単にまとめてみようと思います......あくまで自分の記憶の整理、アウトプットとして。なにぶん昔話なので記憶違いがあるかもしれないし、最近の機体で飛んだことはない(そりゃそうだ)から、現役の人力飛行機パイロットさんの役には一切立たないと思います:
- 離陸
- 試験飛行の開始前には、機体の組立は任せてローラーを使うなりして身体を暖めておくほか、組立後にはチーフと共に機体をぐるっと一周しながら各部の状態や動作を確認、チェックリストに記録しておく。
- スタート位置まで機体が移動した後、グランドクルーのサポートを受けて乗機。滑走開始の準備ができたことを右翼、左翼、テールの順番に声がけ確認し、滑走スタート(掛け声は「3、2、1、GO」)。
- 駆動系に対する衝撃にならないよう、最初はじんわりと力を加えるように、ペダルを踏む。
- 定常飛行中の設定ケイデンス(ペダル回転数)が90rpmなので、およそ100〜110rpmまで徐々にケイデンスを上げる。
- 路面の凹凸に注意しつつ(富士川滑空場は滑走路中央付近であってもひび割れしている場所があった)、真っ直ぐの滑走を心がける。
- 速度が遅いうちはラダーを操作しても効きが悪いので、舵角を目一杯まで操作してはすぐニュートラルに戻し、様子見。効き過ぎたと思ったら即、逆に切る。
- 機体(前後輪)と地面との摩擦音がかすれ、十分な揚力の発生が確認できていれば、ロールの傾きが無いことを確認のうえエレベーターをアップに切り、離陸。
- 定常飛行
- エレベーターをニュートラルに戻し、ケイデンスを定常飛行の設定に戻して高度が落ちないかチェック。高度が落ちるようなら、落ちないケイデンスを探る。
- 異常に速いケイデンスでないと高度を維持できないとか、駆動系から異音が発生し始めるとか、定常飛行の継続が困難な状況が認められた場合には、自ら機体を降ろす判断を行う。
- 気がついたら滑走路の端まで流されていた......ということのないよう、機体を滑走路中央付近に維持すべく適宜ラダーを操作。割とこまめに動かすようにしてたような記憶。もちろん効きすぎたと思ったら即、当て舵。
- 飛行中、ピッチの姿勢は自分が水平だと思っていてもアップになっていることが度々あったので、グランドクルーからの指示に耳をすます。
- 着陸
- グランドクルーからの合図で、徐々にケイデンスを落とし始める。基本的にエレベーターをダウンには切らない。
- 機体全体に対する衝撃にならないよう、降下速度は極力ゆっくりと。もちろん滑走路の終端が目前に差し迫った状況であれば別。
- 着陸する直前に、ピッチの姿勢を確認。極端な前のめりで前輪から接地しないよう注意。
- 着陸後、速度がゼロになるまでは引き続きロールの傾きに注意してラダーを操作。グランドクルーからの声がけ等にも注意。
- 機体が完全に停止し、グランドクルーにより機体が保持されたことが確認された後、サポートを受けて降機。
- スタート地点への機体移動をグランドクルーに任せて、飛行の振り返りコメントと心拍計の記録をビデオカメラで収録(心拍データをPCに移すためのオプションは当時高価で持っていなかった)。