@kazuhito
Kazuhito Kidachi's Personal Web Site Since 2000

定年バカ

いわゆる定年本を何冊か読んできたけど、もう読まなくてもいいかなと思う程度に優勝!って感じだったのが『定年バカ』。これでもか、というくらい定年本をバッサバッサ斬り捨てていくような内容なんですが、定年後の問題に、「こうすれば大丈夫だ」「これをしなければダメ」という正解などない以上、身もふたもないようにも聞こえるけれど、人それぞれ、好きにすればよい、それしかないという結論は正論。

「老後資金は大丈夫か」「長生きするには」などの不安を煽るような言葉に過敏に反応しないことである。どいつもこいつも、あなたの人生なんかにはなんの興味もないのだから。

過去に読んだ定年本からは、読者の不安を煽るだけ煽って、そこから脱するための何がしかの商売に誘導する的な、マッチポンプの印象を受けたことは無かったように思うものの、そもそも定年本なる存在にお金を投じた時点で既に筆者の術中にハマってたのかもね。あらゆる読み物にポジショントークの側面は不可分と思っていますが。

自分で生活をコントロールするといっても、そのためにはひとつ条件がある。定年後に住宅費がかからないことである。

世の定年本を斬りまくるごとく放言している結果として、著者がいわゆる「勝ち組」側の(少なくとも「つよい」)人間に映ってしまう最大の要因はこれ、でしょうね。身体の自由が利くうちは、居住地にできるだけ縛られたくないが故に賃貸派でいる自分にとって、いずれその定年後に住宅費がかからないか、それに近しい状態を目指さないとなぁとは思います。

準備をしさえすれば、何年か先の自分の状況をある程度コントロールできるのではないか、という考えが、虫が良すぎるのである。人間の傲慢でもある。備えがあっても憂いは残るのである。

確かに、東日本大震災のような大規模自然災害を思い起こせばこそ、自分も同じように達観できそうな気がするけれど、難しい。ただ何となく、投じた努力(時間、体力、お金、etc.)に対する見返りへの期待値って、年齢とともに徐々に低く変化してきた気がします。抗えども、どうしたって体力・気力ともに衰えるものだし、そうなると諦めに似た感情も湧きやすくなるっていうか。60前後まで歳とったら達観できるかしら。

書き手はできるだけ多くの人に通用するようなことを書く。いわば「平均的人間」に向けて。そのような読者に希望を与えようとすると、一般論になるしかない。

......定年本含め、俗に自己啓発書と分類されかつ売れ筋に名を連ねるような本は、概ねそういう傾向があるかもしれないですね。

現在地:ホーム > 覚え書き > 月別アーカイブ > 2019年12月 > 定年バカ
Google カスタム検索を利用しています