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日本出版学会 第6回出版アクセシビリティ研究部会

7月30日の覚え書き。専修大学で催された日本出版学会 第6回出版アクセシビリティ研究部会に参加しました。専修大学にお邪魔したのは、2017年3月の「アクセシブルな電子書籍の製作と提供に関する実証的研究」研究成果報告会以来の2度目だったかしら。当日の模様については、ありがたいことに日本出版学会 出版アクセシビリティ研究部会「読書バリアフリー法」制定を出版界としてどう生かすか - Togetterに関連するつぶやきがまとめられているので、そちらをご覧いただければと。

イベントに対する自分の感想については既に、帰りすがらTwitterで吐き出してしまったのだけど、改めて覚え書きしておくと、お話を聞けば聞くほどよくわからないというか、電子書籍のアクセシビリティを巡る状況は混沌としているように映りました。植村要さんの講演「読書バリアフリー法における出版」はとてもわかりやすく面白かったのですけど、同法の「主語による分類」や「対象による分類」を知るにつけ、どうもこう暗澹たる気持ちになってしまって......植村さんのお話で印象的だったのが、読書バリアフリー法成立における関係4団体声明から

今後私たちが本を「買う自由」や「借りる権利」を確立する上で、大きな礎をつくっていただいたと認識しております。

というくだりを引用しつつ、この法律を制定・施行しただけでは本を「買う自由」や「借りる権利」の確立に至らないとの認識(いや皮肉と形容すべきだろうか?)を共有されたこと。罰則のない理念法だし、すごくうがった見方をするなら、実効性の乏しさという点で障害者差別解消法と五十歩百歩な印象すら受けます。いやもちろん前進していることには違いないし、存在しないよりなんぼかマシとは思うのですけど、法律の専門家では無い自分は、どちらかというと悲観的に捉えがちです。

視覚障害者等の読書環境の整備の推進に関する法律、俗に「読書バリアフリー法」と呼ばれる法律が意図するところのバリアとは、果たして何なのでしょう。誰にとっての、どういうバリアが一体どこにどれだけあって、それらはどうすれば除去できるのか......一度すべてのバリアをちゃんと棚卸しないことには、この分野に強い興味と関心を持つ自分が踏み出すべき次の一歩が見えてきません。電子書籍アクセシビリティの全体最適化はもちろん部分最適化にすらたどり着けそうにない、というような謎の無力感を覚えましたし、同時に日本には電子書籍元年なんてまだ来ていないのだろうな、とも。

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