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「アクセシブルな電子書籍の製作と提供に関する実証的研究」研究成果報告会

3月18日の覚え書き。実物大ガンダム立像を見納めしてから、専修大学 神田キャンパス 5号館 561教室で催された、「アクセシブルな電子書籍の製作と提供に関する実証的研究」研究成果報告会に参加しました。先だって、東洋大学で開催された『電子書籍アクセシビリティの研究』公刊記念シンポジウムに参加していたけど、にわかにこの分野が盛り上がりを見せつつあるのは気のせいなのか、何なのか(謎

シンポジウムとかパネリストってあったから、研究概要の報告の後の時間帯は識者の皆さんによる討論会とばかり思っていたのですけど、完全に読みというか期待が外れました。完全にお一人お一人が個別に持ち時間を割り振られた中で講演しておしまい。最後に「指定討論者」という立場で参加された国立国会図書館の安藤さんが総括ぽいことをお話はされ、全体通じての文脈形成的なことはされましたが。

気になったお話としては、まず日立コンサルティングの岡山氏(だったと思う)の講演で、音声読み上げの課題についての解説。具体的には対応文字コードの問題、そして正しい読み上げの提供が難しい事例を複数紹介。点線やダッシュ、叫び声、抽象概念のルビ、「心の声」のルビ、二重ルビ、写真、図、表、グラフ、数式......などなど。音声付きEPUB最強説、としつつも容量や制作コスト、音声を再生できない端末の存在、また読み上げ音声の種類を切り替えられない不自由さが課題とし、今後はSSMLPLSに注目とまとめました。

また千葉県立西部図書館から参加された松井氏は、視覚障害当事者として講演。視覚障害者にとってパソコンはまだハードル高いものの、若い世代は比較的使えており、図書館を頼らなくても電子書籍にアクセスできるようになってきていて、「借りて読む時代」から「買って読む時代」への転換を迎えているらしい。肝心のWebサイトの作りがまだ良くないものがある、との指摘はちょっと耳が痛みましたが、音声読み上げの質に関し「(誤読の有無云々より)読めないより読めた方が良い」などとコメントされたのが印象に残りました。

先述の、安藤さんのまとめの中では、誤読なく電子書籍を提供する手段が現状マルチメディアDAISYだけというのが問題(制作ツール側の課題)と指摘されていたのと( [ 2017-03-20 追記 ] この点については別途、RSTTSの実装の課題でもあるという認識とコメントいただきました)、アクセシビリティの考え方の整理、ガイドラインの類も必要ではないかとの提案をされていました。後者については全く自分も同感で、早いところ電子書籍のエコシステムを構成するステークホルダーごとに、大雑把にでもアクセシビリティ確保上の守備範囲を見える化しないと、誤読をなくすためのコストをRS側とコンテンツ側でどう分担していくかの議論が収束しないでしょうし、そういう意味でこの手のイベントにRSベンダーの方が登壇しないのはもはや限界ではないかなぁと。

以下、余談。イベント中、視覚障害者による視覚障害者のためのモバイルアプリ情報レビューサイトA-apps[えー・あっぷす]というのが紹介されてましたが、20セッション/日というのは幾ら何でもアクセス数少なすぎませんかね。どういった広報がなされてきたか知りませんが、botすらアクセスしていないのでは......あと、アプリのレビューを自由に投稿できるのは良いのですけど、障害当事者(やその支援者)からの声かどうか、内容の確かさを担保するのが大変そうだなと思いました。

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