残業学
著
しばらく前に読み終えていた『残業学 ~明日からどう働くか、どう働いてもらうのか?~』について。残念ながら、じゃあどうするか、という解決策の掘り下げが浅く感じられたのですけど、そもそもなぜ日本でかくも長時間労働がはびこってしまったのか、文化として定着してしまっているかの分析については読み応えがあって、面白かったです。昨今、
多くの「働き方改革」の議論では、長時間労働を是正した後に広がる「将来の成果や希望」への目配りが欠けている
という印象は自分にもありました。中長期的な視点に立って施策が講じられている感じがしないというか......過労死のような問題はもちろん無くさなければいけないけど、闇雲に労働時間を減らそうという上意下達な「圧」ばかりを社会から感じてしまって。消灯だのPCの電源を落とさせるだのって、そういうのも効果がないとは言わないけれど、的外れ感を個人的には強く感じます。なので
この動きの背景にある根本的な問いは、少子高齢化が進む日本において「誰が働き、どのように社会を支えていくのか」ということ
その問いそのものだとか、政府が見出している一応の解というのがあるなら、もっと積極的に周知した方が良いのではないかなと。グランドデザインがまずありきでなければ、時間という尺度だけであれこれしようにも、単に別の何かにしわ寄せが寄ってつらいだけじゃないですかね......そもそもグランドデザインなんてものは無い、っていうならそれはそれでつらいですが(本書を読む限りでは実際、無さそう)。また
残業が多かった時期と個人のキャリアの成長時期が重なったことで、「長時間働いた」という「達成感」を「成長」と勘違いしているのではないでしょうか
という指摘については、どう受け取るか難しく感じました。振り返ると、成長できたと感じる時期というのは自分なりに無理・無茶を少なからずしていた時期だったりもするわけで、個人的な勉強なんかも含めて一定の時間を投資していた側面があります。勘違いは恐ろしいし避けたいけど、程度はさておきここ一番の勝負どころで無理・無茶をしたからこその成長は確かにあるんじゃないかと。あくまで自己評価であって、同じ評価を周囲に強制するつもりはありませんが。