EdgeHTML死すとも......
著
少し前に中野さんがWebの健全性を守る主役は果たして誰なのかでこれ以上のブラウザベンダは撤退してはいけない状況
と書いてらしたのが、まるで伏線か一種のフラグであったかのように、Microsoft is building a Chromium-powered web browser that will replace Edge on Windows 10で噂された内容は、現実のものとなってしまいました。
- Microsoft Edge: Making the web better through more open source collaboration - Windows Experience BlogWindows Experience Blog
- Microsoft Edge and Chromium Open Source: Our Intent
なってしまいました、と書けば伝わると思いますけど、この状況を自分はちっとも歓迎していませんし、PrestoベースのOperaを失ったとき以上に、中長期視点でWebの進化のスピードなり方向性に関し憂慮しています。そもそもシェアの低かったEdgeがChromiumベースになったところで、Web全体への影響なんて軽微でしょ? というのは確かに短期的にはそうだと思いますし、モバイルの分野ではとっくの昔にChrome/WebKitの寡占状態に陥っているわけで(While we Blink, we loose the Web参照)、何を今更って言えなくもない。
それでも、やっぱり、業界全体で大感謝ひらいて、一日中歌い踊ってシャンパンあけて良い
とは思えないのです。Re: Webの健全性を守る主役は果たして誰なのかで書いたように、自分は多様性こそ、複数の選択肢から選択可能であることの豊かさだとか、競争原理に根ざした進歩に対する期待の源泉であり、多様性を重視しない環境なり社会に未来はない
という価値観を持っているからです。
加えて多様なブラウザ、多様なレンダリングエンジンを是としてなおWebが相互運用性を発揮すべくWeb標準というムーブメントが生まれ、超微力ながら自分もその旗振り役の一人として活動してきたがゆえの残念さがあります。Web Standards Project(WaSP)の、Web標準という価値を世に広める闘いは、ある意味ブラウザ選択の自由、レンダリングエンジン選択の自由を守る闘いでもあったわけで、元WaSPメンバーとしては寂しい限りです。そのWaSP創設者であるZeldman御大は、本件に関しBrowser diversity starts with us.でお気持ちを表明されています。FirefoxというかMozilla頑張れ。超頑張れ。
閑話休題。関連記事を斜め読んで回った中では、Risking a Homogeneous Web - TimKadlec.comの主張に割と賛同してるかな。そして@momdo_さんはMicrosoftが独自エンジンとしてのEdgeを断念してしまった日の記録で嘆いていても仕方ありません。淘汰されてしまうのもまた自然の摂理です。
などと素晴らしく達観されているのですけど、自分は「まだ」無理。自然の摂理、というか経済合理性という名のロジックで望まぬ方向に世界が進んでしまうのは、自分も乗っかっているところの経済システムがベターではあるかもしれないけどベストではない、という確信をどうしても強く抱かせます。
まぁ、EdgeHTML死すとも=レンダリングエンジンの多様性が損なわれようとも、Webのアクセシビリティを高めるための活動を引き続き地道に続けていきたい所存です。Webにアクセスするユーザー、デバイス、それらをひっくるめたWebの利用状況(コンテキスト)、どれ一つとってもレンダリングエンジンの動きに反して多様化する一方の状況なのですから。アクセシビリティおじさんからは、以上です。