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Re: Webの健全性を守る主役は果たして誰なのか

中野さんがお書きになったWebの健全性を守る主役は果たして誰なのかについて。書き出しにあった多分当事者の方々はおそらく自分達の持っている社会的な重要性を自覚されていないというのは、ブラウザベンダーという立ち位置であればこその危機感なのだろうと思ったし、それを敢えて表明してくださったのは、とても貴重な気がしました。

昔はより多様性のあったブラウザも、Prestoエンジンを搭載したOperaの開発が終了したことは非常に不幸なことで、これ以上のブラウザベンダは撤退してはいけない状況だと思います。もちろん、ブラウザベンダが好き好んでこれ以上、開発を終了したりすることは無いと思いたいです。後述しますが、この多様性は技術的に非常に重要です。

多様性という言葉は、自分がWebとかアクセシビリティについて語るときに必ずと言って良いほど使ってしまう言葉なのだけど、ブラウザベンダーやレンダリングエンジンに限らず、多様性は大事だと思っています。多様性こそ、複数の選択肢から選択可能であることの豊かさだとか、競争原理に根ざした進歩に対する期待の源泉であり、多様性を重視しない環境なり社会に未来はない、とも思います。

どのブラウザも、Web開発者が使えるようにアプリを書いてくれない限り、使い物にならないのです。そういう理由で私はWebの開発者の方々が主役だと思っています。

タイトル通り、記事はあくまでWebの健全性を守る主役とは誰か、について書いているわけですけど、中野さんの主張には半分同意しつつ、もう半分は同意しにくい印象を自分は抱いています。というのもブラウザベンダー、っていうか面倒臭いから具体的に名前を挙げますけど、GoogleにはWebの健全性を左右する大きな力がある=主役の一人と感じているからです。でなければ、例えばGoogle AMPに関する公開書簡に署名なんかしません。そもそも「Webの健全性」とは何かってところをすり合わせないと、噛み合わない議論ではありますけど。ただ、それはそれとして

私は今、あらためて、Webアプリ、Webサイトの開発者のみなさんに、標準仕様を大切にしてくださいと言いたいです。

というのはごもっともだと思いますし、Webアプリ、Webサイトの開発者の一人として、標準仕様を大切にしようと思います。そしてまた、自分が影響を及ぼせる範囲においては、同様の呼びかけをし続けたいとも思いました。Web Standards、Web標準という言葉を目にする機会が圧倒的に少なくなった昨今、個人的にもWaSPの活動が終焉を迎えてからというもの、あまりこう積極的にその手の旗振りをする、ないし旗振りをしなければならない場面というのは、減ってしまってますけども。最後に

今でも、Web開発者の方々から未だにIEに対応しないといけない案件に対する愚痴を見かけます。しかし、その原因を作ったのはIEの開発者以上に、当時のWeb開発者が、最大シェアのブラウザである「IEでだけ動けば問題無いでしょ」という姿勢でWebアプリ・サイトを開発してきたためであることは若い人にも知っておいていただきたいと思います。

上記のくだりは、ちょっと当時のWeb開発者を悪者扱いしすぎてはいないだろうか、と思いました。中には、IEでだけ動くことを良しとしないながらも、予算や納期といった要件から止むを得ず、「結果として」IEでしか動かないWebアプリやWebサイトを作らざるを得なかった状況も、少なからずあったと思います。そしてそれは中野さんもよくご存知のはずで、というのも上記のくだりに至る前には

私が長年この業界で様々な他社・他者様とやりとりしてきてよく言われることがあります。「御社のブラウザはシェアが大きくないので対応する価値が無いんです」と。私もブラウザという世界でも有数の巨大アプリを開発している身なので費用対効果等の観点からそれは非常によく分かります。

とお書きになっているからです。ですから、「IEでだけ動けば問題無いでしょ」という姿勢を持っていた(今も持っている???)開発者は非難されて然るべきですけど、そうではなく、IEでだけ動くよう設計・実装することのリスクやデメリットを顧客(なり上司なり、誰かしら仕様に関する決定権者)に主張してなお、経済合理性に屈するほかなくなってしまった開発者を非難する気に自分はなれないし、少なくとも一緒くたに論ずるべきではないと思います。

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