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飲食店のメニューのアクセシビリティについて思うこと

Webじゃないアクセシビリティ Advent Calendar 2018、初日の記事です。視覚障害者の方と一緒に飲食店に行き、そこに点字のメニューが備えられていない場合(そういうお店が圧倒的に多数派だと思うのですが)、メニューの出来の良し悪しだったり、音声で情報を伝えることの難しさについて、都度考えさせられます。「晴眼者」という言葉はあまり好きではないのだけど、とにかくメニューを利用できる程度に視覚がある人であれば、例えば

  1. メニュー全体を俯瞰する
  2. 気になる商品を複数ピックアップする
  3. 値段など複数の条件に照らして、最終的な注文の品を決める

というプロセスを経て注文に至るわけですが、そもそも最初の「メニュー全体を俯瞰する」行為を音声でどう実現するかが、超難しかったりするわけです。もし仮にお店がさまざまな国の料理を扱っているなら、「中国料理」「韓国料理」「日本料理」というような、粗い粒度のラベルでメニューの全体像を真っ先に伝えるのが効率的に思えますが、そもそも情報の適切な組織化、構造化、ラベリングができていないと、自分でそういう情報設計のプロセスを肩代わりするか、さもなくば片っ端からメニューを読み上げるしかなくなります(選択肢が多くなければそれもアリですが)。

上記の方法は、割と王道だと思うのですけど、何よりもまず値段で決めたいような人には、あまり適した案内の仕方ではない(効率的でない)とも思うんですね。加えて、大カテゴリから中カテゴリ、そして小カテゴリと順に絞り込んだ先に希望する品が無かった場合、中カテゴリに戻って絞り込み直すのか、いっそ大カテゴリから選び直すかといったところで、お互いに悩ましさが生まれたりします。どのような伝え方をするにせよ、結局のところ全ての選択肢にアクセスできない限り、複数の候補から比較を通じて注文の品を選び出すことはできないでしょう。ちゃんと俯瞰し比較できることが理想、あるべき姿とわかっていつつも、時間的に割に合わなくなったりするので、メニュー全ての読み上げを諦めるケースは多いと思います。

そうした状況に関し、自分が何か革新的なアイデアを持っているわけではありません。そもそも点字のメニューがあれば......と思わなくもないけれど、点字が読めない視覚障害者の方も相当数いらっしゃるように聞いていますし、点字メニューの常備が障害者差別解消法の言うところの合理的配慮の範囲外であるケースも、少なくないでしょう。

なのでせめて飲食店のメニューは、晴眼者が視覚障害者に口頭で少しでも伝えやすいつくりであって欲しいと思います。先述の情報設計の良し悪しもそうですが、個々の品に写真があるかどうかは、大きな違いを生むと思います。写真の存在によって説明できる情報量は格段に増し、それが貴重な判断材料になるはずです......少なくとも自分は、稀に海外に行ってレストランに入り文字だけのメニューを渡されると、困りますもん。メタな情報をどこまで充実させるかは、それはそれでお店の側からすれば悩ましいでしょうけどね。

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