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138億年の人生論

自分がこれまで、物事に対する捉え方や考え方について大きな影響を受けてきたと思う人物の一人に、松井孝典氏がいます。「分化」や「共同幻想」といったキーワードが、自分の思考回路の奥深いところに刻み込まれているのは、間違いなく松井氏の著作からの影響です。『138億年の人生論』は、その松井氏の最新著作であり、前付けに科学者として半世紀ほど歩んできた私が初めて著す「人生論」とあっては、読まないわけにはいきますまい。松井氏の宇宙スケールの視点・視座から導き出されたのは、ユニークな「激変説」に基づく世界観であり「斉一説」に対する否定。だからこそ、

「わからない未来」に思い悩むことほどムダなことはなく、いまこの一刻一刻を精一杯生きることこそが人生において大事

というメッセージにはとても共感できました。それに続けて年配の方がしばしばおっしゃる「歴史に学べ」という斉一説的なお説教が、まったくナンセンスとあったのは、笑えましたね......社会変化が著しく、未来の予測がまったくと言って良いほど立たなくなった昨今だからこそ、松井氏の斉一説の否定には説得力があるように感じます。また

家族関係でも、身内だと思うから意見がぶつかるとストレスに感じますが、1人ひとりが独立した、時空を構成する別の断面の存在だと思えば、自分の思うようにいかないのが当たり前

という説明についても、なるほどなぁと感心することしきり。もともと、一人一人は別個の人格を有しているからこそ、血の通った相手であっても思い通りになんか決してならないと諦観していたし、だからこそ息子には「他人と過去は変えられないが、自分と未来は変えられる」って言葉を以前から口酸っぱく言ってたりもするのだけど。にしても、時空を構成する別の断面の存在とはまた、えらく詩的かつ印象的な表現。同様に、宇宙の時空のなかで、個々の人の凍結された瞬間の事象の断面をつなげたものが人生という表現も興味深かったです。そして

体力が必要なのももちろんですが、それ以上に必要なのは、執着心と集中力です。結局、仕事であれ勉強であれ、必要なのはこの3つにつきます。その前提に「好きであること」があるのは当然です。

というくだりが「過去をふりかえる暇があれば新しいチャレンジを」という章にありました。これもまた、とっくに始まっている人生の後半戦を生き抜くに当たって、重要な示唆であるように思えました。体力、執着心、集中力......いずれも年齢とともに衰えがちな傾向を感じているので、気をつけたい。執着心と集中力が足りない人は、おそらく対象とすることへの好奇心が弱いともあったので、ポイントはやはり好奇心をどれだけ持てるか、どれだけ対象を好きになれるかっていう部分の努力なり工夫なんだろうなぁ。

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