@kazuhito
Kazuhito Kidachi's Personal Web Site Since 2000

Re: Webアクセシビリティとは?みんなに使いやすいUI/UXデザイン

ferretのWebアクセシビリティ関連記事に言及するのは、Re: 心地いいホームページとは?アクセシビリティを高めて離脱率を低くするための5つのポイント以来2度目。致命的な誤りが書かれているわけではないものの、Twitterでキーワード「アクセシビリティ」を検索した結果を眺めるとそこそこ閲覧されているっぽいので、たとえ言い掛かりと思われようと、敢えて言及しておきます。今回はWebアクセシビリティとは?みんなに使いやすいUI/UXデザインという記事についてですが、厚生労働省のサイトを引き合いに出しているくだりで

そのサイト上では、文字拡大サービスの提供や音声読み上げサービスの提供、サイト上の現在地の把握、「上の階層に戻る手助けとなる テキストリンク」の配置など、細部にわたり配慮されています。

とあります。記事全体の文脈とあいまって、文の前半にある文字拡大サービスの提供や音声読み上げサービスの提供がアクセシビリティ対応において必要な、あたかも必須であるかの印象を受けるかもしれません。しかしいずれも、提供してはダメというわけではないものの、Webアクセシビリティにとって必須の存在ではありません。これは、Webアクセシビリティに専門的に携わる人間にとって既に常識ですが、比較的最近になって取り組み始めた方は特に、誤解のなきようご注意いただきたいポイントです。総務省が公的機関(もちろん厚労省も含まれる)向けに公表している、みんなの公共サイト運用ガイドライン(2016年版)の「2.1.4. ウェブアクセシビリティ対応に関する誤解」には、注意点として

ホームページ等において、音声読み上げ、文字拡大、文字色変更等の支援機能を提供する事例がありますが、これだけでは、ウェブアクセシビリティに対応しているとは言えません。

と、枠囲みかつ赤字で書かれています。音声読み上げ、文字拡大、文字色変更等の支援機能をコンテンツを提供する側が提供しなくとも、その種のカスタマイズはユーザーの利用する支援技術(ないし、OSやWebブラウザが備えている機能)の側に委ねたほうが安上がりなうえ、好みのスピードでの読み上げや好みの文字サイズ、好みの前景色/背景色の組み合わせなど、より多様なユーザーニーズに応えることができます。ただしその場合、支援技術等がその性能を十分に発揮できるよう、コンテンツがアクセシブルに実装されている(例:適切にマークアップされている)という大前提は必要になりますが......そもそも音声読み上げ、文字拡大、文字色変更等の支援機能を自前で提供するとしても、アクセシブルなコンテンツ実装は必要でしょう。ちなみに言及ついでに記しておくと、同記事の前半にある

省庁をはじめ日本の企業の多くは、日本工業規格「JIS X 8341-3」の基準準拠を目指しているようです。

というのも、微妙というか要出典な感じです。もちろん、そういう事実があるなら、JIS X 8341-3活用に必要な基盤を整備するウェブアクセシビリティ基盤委員会(WAIC)の活動に参加している立場としては、大変嬉しく思います。しかし、WAICでは実態調査を過去に何度か行っており、その結果に基づく限り一般企業でのJIS X 8341-3活用は決して多いとは思えません。JIS X 8341-3に則る・則らないに関わらず、何かしらWebアクセシビリティに取り組んでいるという企業であれば、数は増えますが。

現在地:ホーム > 覚え書き > 月別アーカイブ > 2018年10月 > Re: Webアクセシビリティとは?みんなに使いやすいUI/UXデザイン
Google カスタム検索を利用しています