APLシンポジウム「伝統を未来へ、組版の国際化」
著
慶應義塾大学で催されたイベント、APLシンポジウム「伝統を未来へ、組版の国際化」に参加しました。本当はW3C Workshop on Digital Publication Layout and Presentationに参加したかったところですが、さすがに丸二日を同イベントに費やすのは難しく、少しでもfantasai氏とRichard Ishida氏のお話が伺えればと思って。結果的にお二人の他にも大変興味深いお話が伺えたし、とても有意義でした。会場は書籍・出版・印刷系の方が多い印象で、微妙にアウェー感を覚えました。
Richard Ishida氏のお話で興味深かったのは、Language matrix。そこで取り上げられているのはたかだか60言語なのだけど、世の中には数百という言語をサポートしているWebサイトもあるわけで(自分の翻訳記事、世界で最も多言語対応の進んだWebサイトとは?(2018年版)参照)、道のりは遠いなぁと。さまざまな言語における改行ルールのお話も、そんなん知るかーい!!のオンパレードで面白かったです。
Florian Rivoal氏の講演、電子書籍レイアウトワークショップ報告では紙媒体とWeb媒体の対比を「絵より、像」という比喩で説明されていたのが印象的だったかな。環境に応じて姿形は変わり得る......ということなのだけど、その媒体特性自体をデメリットと見るかメリットと見るかで、だいぶスタンスが変わりそう(紙媒体寄りの方はどちらかというと同一性保持の観点からデメリットとして見ていそうという偏見が僕にはあります)。
fantasai氏の講演、Designing CSSはWebのもつ素晴らしさ、そしてそれを支えているCSSの優れた特性というのを再認識させてくれました。なかでもFundamental Goal of the Web = Accessibility of Information
という言い切りは、アクセシビリティおじさんとしては大変心強く感じたフレーズ。途中、懐かしのCSS Zen Gardenが引き合いに出されたのだけど、同一のコンテンツに全く異なる表現をもたらすというのを例示するにはいまだに同サイトが優れているということだろうなと。
ちなみにRichard Ishida氏には、休憩時間にご挨拶させていただきました。氏の活動は本当に貴重かつ素晴らしいと思っているし、その知見には常に圧倒されまくってきたので、ちゃんとお話できてよかったです。またfantasai氏とはイベント終了後にお話して、最近個人的に気になっているCSS in JSを巡る議論についてどう思っているか伺いました(概ね予想していた回答が返ってきて満足)。驚いたのは、彼女を見かけた記憶のあるTPAC@Bostonでの話をしたら、ちゃんと当時の様子を覚えていたこと......2007年のことなのに(汗