しずかの山
著
2015年、初めて西穂高岳に登りに行ったとき、西穂山荘で借りて読んで以来強く印象に残っていた漫画、『しずかの山』のKindle版3巻セットを最近になって購入、読み直しました。たった3巻で完結しているだけにとても読みやすく、しかしそのコンパクトな中に描かれている人間ドラマ、それぞれの葛藤というのは胸を打つものがあります。
強烈なのは、やはりエベレストでの遭難シーンでしょう。登山をテーマとした映画なんかでもありがちなシーンではあるけれど、本当にちょっとしたミスが命取りになってしまう......そして、滑落死してしまったはずのザイルパートナーを早く切り離さなければ、自らの生死も危ういという苦しさ、厳しさ。岩陵歩きを好む自分にとっては、強く恐怖を感じる描写です。
いっぽうで、最終的に主人公の静(しずか)は一種の救済を得るのだけど、その一連の過程を付かず離れず見守っているかのような存在として描かれている女の子、コーレの存在がとてもありがたい。彼女は暗い過去に理由があってか言葉を発することが一切できないのだけど、その設定がまた一段と、脇役であるにもかかわらず彼女の存在感、静にとっての精神的支柱という意味合いを強く引き立てているような感じ。
登山をテーマにした漫画、西穂山荘で今年8巻まで読んだ『岳』を筆頭にまだまだ沢山あってとても読みきれないのだけど、徐々に買い集めていこうかと。現実の山歩きと漫画の世界とはもちろん別物だけど、それぞれに違った「山」の楽しみ方、魅力があるような気がしていて。