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東洋大学「人間価値研究会ダイバーシティ研究グループ」シンポジウム

11月9日の図書館総合展で一緒に登壇させていただく植村さんから教えていただいた、東洋大学「人間価値研究会ダイバーシティ研究グループ」シンポジウムに参加をしました。テーマが「障害者差別解消法と電子書籍のアクセシビリティ」ということで、図書館総合展でのディスカッションの仕込みに役立つかもしれないと思ったのと、アクセシビリティ界隈ではご著名な石川先生のお話を聞きたいと思ったのが動機。会場は東洋大学 白山キャンパス8号館7階125記念ホールで、1月に参加した『電子書籍アクセシビリティの研究』公刊記念シンポジウムと同じ場所。

石川先生の基調講演「国連障害者権利委員会と我が国の障害者政策」で興味深かったのは、まず改めて障害の社会モデルについて再確認できたこと。機能的障害×社会的障壁=社会的障害 であるからして、機能的障害はゼロにできなくとも、社会的障壁をゼロにできれば、社会的障害はゼロにすることができる、と。あとは、権利委員会での活動がどれだけハードかの一端を垣間見れたことでしょうか。第17回期と第18回期の報告を具体的に聞かせていただけたのですが、国連総会決議から課せられた審査ノルマを(当然すべて英語で)こなすというのは、恐ろしく大変そう。そして、日本における電子書籍のアクセシビリティについては「政策の空白地帯」とし、公共調達の仕様に国際標準を取り込むことの大切さを説かれていました。かなりお忙しいかと思いますけども、引き続き障害者政策委員会の委員長としてのご活躍には、勝手ながら&陰ながら期待しています。

続く報告1と報告2では、「電子書籍の音声読み上げーSSMLの導入に向けて」 と題しアライド・ブレインズの大野氏が、また「大学図書館と電子書籍のアクセシビリティ」について大日本印刷の盛田氏が講演(と一部デモ)をされました。2020年からのデジタル教科書の導入に向け、誤読を解消するための具体的手段としてSSMLの実際のところを紹介されていたのですけど、ここでやはり課題だなと思ったのは、「アクセシブルな電子書籍」とはそもそも何か、そこに日本語の読み上げ品質はどう絡めて定義するのか(しないのか)、といったところで業界的な共通認識がまだできていないように感じられたこと。

当然ながら、誤読ゼロを担保できない限りアクセシブルとは言えない、なんてことにはならないはずで、その前提ではSSMLも使いどころをよくよく考えたうえで導入しないと......そもそも日本語に対応したSSMLの実装は無いみたいですし? お話を聞きながら軽くググったところ、Amazon Alexa(Amazon Echo)やActions on Google(Google Home)でも採用されていて、端末からユーザーへのレスポンスをSSMLで定義できるらしい、というのを知りました(Amazon Alexa(Amazon Echo)で使用できるSSMLタグのまとめ | KOTODAMA TODAY参照)。

なるほど、スマートスピーカーの普及がSSMLの実装を後押しする可能性もあるわけですね......ただまぁ、最後のパネルディスカッションで石川先生が主張されていた、AIなり深層学習の技術を取り入れていくほうが、いちいち人間がSSMLで正しい読みを指定するより現実的では? との見解に自分も同意します。むしろ、正しい読み上げを追求するより前にまず、電子書籍内でのナビゲーション手段を提供・充実させないと、です。そしてそのためにはもはや、コンテンツ提供側と利用者側だけで閉じた議論を続けるのは限界で、RSベンダーやビューアーベンダーをもっと巻き込んでいかないと、前に進めないと強く感じました。

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