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宇宙飛行士の採用基準

昔読んだ本で覚え書きしていなかったのを読み直すシリーズ。『宇宙飛行士の採用基準 例えばリーダーシップは「測れる」のか』は、著者の山口孝夫氏が宇宙開発を支える人材マネジメント面での知見を、ビジネスシーンで活用できるノウハウとして、社会へと還元することができないだろうかとの想いから執筆された本。とはいえ、個人的にはそういう面で役に立ったというより、純粋に宇宙飛行士の選抜や訓練に関する四方山話が面白かった、という印象。一つにはセレクト・アウトとセレクト・インの使い分けに関する話が興味深くて、どういうことかというと

不適格な人を母集団からは以上していく方法であるセレクト・アウト(SELECT OUT)」でした。例えば、学力が一定水準に満たない人を排除する日本の大学入試はそのほとんどがセレクト・アウトです。

に対して

最終の第三次選抜からは明確にセレクト・インに切り替えます。つまり不適格者を排除するのではなく、母集団の中から宇宙飛行士の資質のある適格者を選び出していきます。

というのが両者の相違。あとは、リーダーシップとフォロワーシップという話も、宇宙飛行士の資質については必ずと言って良いほど登場するのですが、山口氏は

宇宙飛行士を見ていると、本当のフォロワーというのは本当のリーダー、本当のリーダーというのは本当のフォロワーだということに気づかされます。

とお書きになっていて、つまりこれらは異なる能力ではなく表裏一体、実は同じ能力が異なるコンテキストにおいて違う呼び名になるだけなのだ、という学びが得られました。へええ、と思った四方山話を一つあげると精神心理的なストレスに言及した中で披露されたエピソードで、

ひどい場合は、自分の命を危険にさらしてしまう、信じられない行動をとることさえあります。旧ソ連時代には、エアロック(宇宙空間へ通じる出入り口)から衝動的に出てしまった宇宙飛行士がいました。もちろん宇宙服は着ていましたが、命綱を宇宙船に取り付けることを忘れてしまっていたそうです。

具体的にいつの、どういストレスが加わっての話かまでは書かれていないのですけど、しかしとても興味深いです。旧ソ連時代ということだから、ISSでは類似の事案というのはおそらく起こっていない(起こらないよう手順化されている)と思いますが......人間、追い詰められると何をするか分からないものだなと。

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