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人力飛行機講演会@航空科学博物館

イベント後半で登壇中の岡宮氏(右)と阿部氏(左)

2月21日の覚え書き。昨年8月、人力飛行機展に行った時点で予告されていた、人力飛行機講演会に参加すべく航空科学博物館に行きました。どれぐらい混み合うか読めず、前夜は千葉の実家に帰省しJR成田駅から初めてバス(片道530円)で向かってみたのですけど、予想以上に時間もお金もかかってしまって、遠さを実感。11時過ぎに博物館に着いて、適当に飛行機の離発着を眺めるなどして13時の開始を待ちました(ちなみに会場はまったく混み合いませんでした)。

この講演会、日本での人力飛行機の初飛行成功から今年で50周年というのを記念して企画されたもの。50年前、人力飛行機「リネット」で飛行した(当時、日本大学で木村秀政研究室所属の学生でいらした)岡宮宗孝氏と、長らく日大航空研究会(NASG)の顧問を務め昨年退官された安部建一氏のお二人が講師。前半を岡宮氏が単独でお話され、後半は司会進行の方が投げかける問いにお二人が答えていくという進行。

1時間くらいで終わるのかなと思いきや、終わったのは2時を15分くらい回った頃でした。最後の方は、講師のお二人を囲んでの記念撮影大会になりました。本当はミーハー根性丸出しで自分も一緒に撮りたかったけれど、いずれ所沢航空発祥記念館の企画展「日本初の人力飛行機「リネット」~初飛行から50周年を迎えて~」のほうで、チャンスがあったらお願いしてみようかなと。帰りしな、下総航空基地にお勤めの諏訪さんと数年ぶりに再会、ご挨拶できたのが嬉しかったです。以下は、講演内容の覚え書き:

前半(岡宮宗孝氏の講演)

後半(岡宮宗孝氏、安部建一氏との一問一答)

人力飛行機に取り組むきっかけ?
岡宮氏:卒業研究のテーマの一つだった。それまで人力飛行など考えたこともなかったが、興味を持った。
安部氏:中学3年の時、リネットのニュースをTVで見た。大学進学の際にそれを思い出し、日大を受験。4年生のとき木村研究室で卒業研究に人力飛行機を希望したが人気が高くて取り組めず、モーターグライダーをテーマにした。その後、風洞を作ることになって日大に着任、野口先生が辞めたタイミングでNASG顧問に。
人力飛行に取り組んだ感想は?
岡宮氏:努力した後の結果が大事。幸い、飛行に成功したので達成感はあった。社会人になってから、苦しかった学生当時のことを思い出して困難を乗り越えられた。
安部氏:初飛行の感動は、それまでの苦労を忘れるぐらい。感動を与えたくて顧問に就いた。
人力飛行の魅力とは?
岡宮氏:所沢航空発祥記念館でかつてイタリア人に人力飛行機を説明したことがきっかけで、寄稿を依頼されたことがある。初飛行のこと、日本記録を作ったことについては書けたが、なぜ日本では人力飛行が盛んかは書きにくかった。おそらく、日本人の根底にあるものづくりの心と、日本人は手先が器用だからだと思って書いた(やや人種差別になってしまうが)。
安部氏:軽くて強い素材の選択が大事。時代とともに材料の変化をよく調べておかないといけない。
チームワークについてどう思うか?
岡宮氏:同じ代にいたのは都合10名。プレハブの中で3か月ずっと一緒に寝泊まりするなど、まさに「同じ釜の飯を食った仲」。チームワークなしには作れなかっただろう。今でも年に一度は当時の仲間で集まっている。人力飛行機は、航空の基礎を学べるだけでなしに、プロジェクト管理が学べる。チームワークなしにプロジェクト管理は不可能。
安部氏:まったく同じ意見で、チームワークがないとダメ。いろんな喧嘩もするが、期限と目標は守らなければならない。喧嘩した結果として、お互いのいいものを見つけることができると、好記録につながる。
鳥人間コンテストに出場している機体はどれも似て見えるが、現状維持と革新、どちらが必要か?
岡宮氏:鳥人間コンテストに出す機体については、現状維持で良いのではないか。世界記録は115km、ただ飛距離を伸ばすことにはもはや、意味がないのではないか。達成されていないクレーマー賞はまだ存在する。マラソン賞やスポーツ競技には、今の鳥コンの機体では勝てないだろう。翼が長すぎるので(32m)、半分の16mくらいの翼長で飛ぶ機体に挑戦してほしい。
安部氏:ライト兄弟の頃の飛行機は先尾翼だったが、今は尾翼は大抵後ろ。飛ぶ飛行機の形は、ほぼ決まってくる。問題は軽く強く作れるかどうか。カーボンナノチューブなどを使えば可能性はある。あとは最後はエンジン次第。
海外では人力ヘリコプターや人力羽ばたき機への取り組みがあるが?
岡宮氏:ヘリコプターで長時間の飛行は難しい。羽ばたき機については、羽ばたいて離陸できたという例はまだない(離陸時は機体をグライダーのように牽引されていた)。人間がもっと楽に飛べるよう、プロペラ方式をもっと改良してほしい。
安部氏:内藤先生が作った人力ヘリにYURIがあるが、海外の人力ヘリはYURIに似ている。究極的な形は、似てくるものではないか。日大の飛行機はダイダロスの物真似と言われるが、良く飛ぶものは皆まとまってくる。技術的には素材勝負になってくる。
(会場からの質問)人力飛行機は日常的に、通勤・通学に使えるようになる?
岡宮氏:昔はスマートフォンもなかった。人力飛行機で通勤・通学は難しいだろうが、格段の進化は期待できる。それだけ自分の力で空を飛ぶのは難しい事。電動自転車のように、アシストがあれば、あるいは。
(会場からの質問)リネットの形状は、その後の機体に引き継がれていないほどユニーク。どうやって思いついたか?
岡宮氏:当時は地面効果がないと人力だけでは飛べない、と考えていた。つまりまず低翼にしないといけない。プロペラがプッシャーかトラクターか、については、水平尾翼にプロペラ後流を当てたくなかった。その結果、ピッチングの安定性は低くなったため、長距離を飛ばす観点からは、いいデザインとは言えない。しかしイタリアのデザイナーからは絶賛を浴び、イタリアの展示会に出した(その後、帰ってこなかった)。盗まれてしまったのかもしれない。
人力飛行機とは一言で言うと?
岡宮氏:感動を与えてくれるもの。離陸した瞬間は感動的。
安部氏:夢。
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